阪神・西勇 亀山氏に語ったV意識――開幕投手より“日本一の胴上げ投手”に

[ 2020年2月13日 05:30 ]

亀山つとむ氏(右)とがっちり握手をかわす阪神・西勇輝(撮影・平嶋 理子)
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 阪神・西勇輝投手(29)がスポニチ本紙評論家・亀山つとむ氏(50)と対談し、筆頭候補に挙がる開幕投手以上にマウンド上で日本一の瞬間を迎える「閉幕投手」への意欲を示した。そのために早寝早起きを始め、すべての面でベストを尽くす方針。今季目標には改めて「180投球回以上」を設定し、「日本一」を宣言している矢野燿大監督(51)に呼応した。(構成・惟任 貴信)

 亀山 阪神2年目のキャンプも第2クールが終了。調整の進み具合は?

 西勇 1年目より楽にできていますし、したいことも自分の思い通りにできているので、順調に来ていますね。

 亀山 昨年の印象で言うと、梅野君を筆頭に、チームメートとコミュニケーションを取ることを重視している感じがした。

 西勇 2年目も継続して、後輩や先輩方にも話を聞きながら。中堅なので、みんなを「回せる」ように心がけています。

 亀山 ベテランにそれをさせるのではなくて、自分が……と?

 西勇 そうですね。僕たちが(先輩、後輩双方の話を)しっかり聞いてコミュニケーションを取った方がチームとしてもいいかな、と。

 亀山 開幕投手の常連だったメッセンジャーが引退した。当然、今季は西投手にスポットが当たる。開幕投手への意識は?

 西勇 う~ん……その辺は、全員でローテーションを守りたいと思っているので、全員が奪いに来るべき場所と思っています。僕はどちらかと言うと、開幕投手よりも、優勝が決まる最後の瞬間のマウンドにいたいというのがあります。その1試合の方を大事に考えているので、そこを意識しながらチームのために1年間戦って、最後(の優勝決定戦で)、笑顔になる瞬間にマウンドに立っていたいというのが一番、あります。

 亀山 すごく難しいことだよね。特にセ・リーグの野球の流れで言うと、その試合で完投、完封ペースで行っていないと、そこにいられない。

 西勇 そうですね。バントとか、打てなくてもダメですし。すべて自分のやるべきことができた時に、本当に笑って喜べるんじゃないかと思っています。当然、完封、完投も難しいですけど、やるからには目指してやりたいですね。監督さんも、そういうことを言っておられるので。常にそういう気持ちを持ちながら、マウンドに立ち続けたいと思っています。

 亀山 その瞬間にマウンドに立ち続けるために昨季以上にやらないといけないことは?

 西勇 早寝早起きですかね。いつも、していることなんですけど。一周回ってと言いますか……。食事もそうですし、体のケアも、技術的なこともそうですけど、1年間、戦って行く中で、睡眠というのは、すごく大事だと感じました。たとえばナイター(翌日の)デー(ゲーム)とか、しんどいですよね。そういう時もサッと寝られるように。早起きして体調よく行けば、肩や肘の不安とか体調面も良くなってくる。昨年以上に早寝早起きというか体調面を意識していきたいですね。ケアやウエート、打撃、投球はずっとやっていますけど、睡眠って、けっこうみんな、おろそかにしがち。原点回帰というか、そこをもう少し意識した方が、1年間、体力が持つと考えています。

 亀山 「寝よう」と思って寝られるもの?

 西勇 そうですね。僕はけっこう(午後)9時前にはもう寝ますからね。

 亀山 それは早い。よく、年を取ったら寝るのも体力が必要と言うけど?

 西勇 それができなくなってきた時に、「引退」が近づくと思っています。今は寝られる時間に寝て、起きられる時間に起きてというサイクル。9時に寝て5時に起きるという生活を何とか継続していきたい。(生活面も)隙がないようになりたいですね。

 亀山 セ・リーグで1年間やってみて、投手交代のタイミングや打順の巡りという面で、パ・リーグ時代とは全然違う野球をしたと思う。何か変えないといけないことや、気づいたことは?

 西勇 打撃やバントをしっかりしないと代えられてしまうので、そこが一番、気を使いましたね。

 亀山 打撃やバントは、どの投手よりもしっかりできていたイメージだけど。

 西勇 そこは、誰よりも(練習に)取り組んだ自負もあるので。ただ、投げていて5~6回で「代えられるな」と、におう時があるじゃないですか。そういう時というのは、やっぱりバント(失敗)だったり、三振だったりと、打てていない自分もいるので、巡り合わせで(交代となる)。たとえば同点とかの状況で(攻撃の)好機が巡ってきたら代打というのは、もう「仕方ないな」とは思うようにしていました。

 亀山 その、におうタイミングが、セとパでは全然違うよね?

 西勇 全然違いますね。パ・リーグなら投げさせてもらえますし、行けるところまで行けよ、という感じですけど。ここで点を入れないと継投に入るから代わろう……がセ・リーグ。もどかしさはありましたね。

 亀山 投球回にこだわりがあるタイプと思う。「セ・リーグあるある」で5~6回のヤマをどう越えるか、みたいなところがあるのでは?

 西勇 そうですね。そこの部分では、勝っていても負けていても、自分が仕事をまっとうすれば、そこを見てくれている監督なので。5~6回に点を取られたら交代の確率は上がるので、中盤をゼロ、ゼロで抑えたら「まだ行けるんじゃないか」というのは、あると思う。中盤をいかにゼロに抑えるかが、(投球回を伸ばす)ポイントになると思います。

 亀山 目標に掲げている数字などは?

 西勇 シーズン180投球回ですね。去年も言いましたけど。基本は、やっぱり180イニングで、1試合平均7回以上ですね。

 亀山 プロ野球界はヨーイドンで目標を立てる選手が多いけど、西君は最後(の試合のマウンド)まで立ち続けたいということだから、143試合でもダメだよね。クライマックス・シリーズから日本シリーズに行けば、もっとたくさんの試合に投げないといけないよね?

 西勇 そうですね。180から200投球回くらいになりますね。

 亀山 そうだよね。だからこそ原点回帰して、しっかりと寝るところから、やれることをすべてやって、最後(の試合のマウンド)に行くというのが、理想だよね?

 西勇 フル回転ということですね。だから普段の行動から変わってきます。飲みに行くとかじゃないし、ご飯もそうだし。自分の体のためと思ったら、やるべきことが変わってきます。まあ四六時中すべてが野球につながってくると考えてしまうと、それはしんどいと思います。家に帰って寝るまでの時間はフリーでいいと思います。早く寝ようという意識を持ちながら、過ごしたいと思っています。

 亀山 西君と言えば、マウンドでもそうだけど、打席内でも表情が明るいというか、極力、いい表情で野球をしようとしていると感じる。

 西勇 まあ純粋に楽しんでいるんですよ。

 亀山 特に打撃の時なんて……。

 西勇 もう、楽しくて仕方ないですよね。

 亀山 (打撃を)今までやっていなかったから、余計に開放された感じなのかな?

 西勇 そうですね。しかも誰も期待していないと思うので、打ち上げようが、ゴロを打とうが、好きにできますから。「惜しかった」で終わる。好きにできますよね。ただ、僕が1点を取るのと取らないのとでは、全然違う。(相手が)ピンチになって(前打者が)敬遠されて僕に回ってきて無得点に終わるのか、(僕が)打って1点2点が入るのかで、全然違う。投手として、自分がやられたら嫌なことをやった方がいいと考えています。だから好機では「絶対に打ってやろう」と思っています。

 亀山 では今年もより一層、打撃練習を?

 西勇 毎日2箱、打っているので(笑い)。 

 亀山 話は変わるけど、矢野監督は日本一を目標にスタートすることを発信した。この言動は選手サイドからすれば、「それを言う?」なのか、「よく言ってくれました」なのか、どっち?

 西勇 それ(日本一を目標に掲げること)が普通でしょう。僕は「監督、よく言ってくれました」派ですね。その方が気持ちいいじゃないですか。目標は一つですから。たとえばクライマックス・シリーズ狙いなら、Aクラスでいいですよね。そうではなく、最後の一つなので。言うのは簡単と思われるかもしれませんけど。でも、矢野監督は先頭に立って発信していってくれるので、付いて行きやすいですね。

 亀山 選手の一歩前で楯になるというか、そういうこともしてくれる監督だよね?

 西勇 正直、理不尽な監督さんもいると思います。「ミスしてもいい」と言いながら、ミスしたら怒るとか。でも、矢野監督は、本当に怒らないですから。だから選手は、本当に思いきってできるんですよ。何も恐れない。自分のやりたいことをやってプレーすれば何も文句ないよと、ミーティングでも言っていましたから。実際、去年も、本気でやった選手には怒りません。でも、適当なプレーとか、おろそかにした時はバーンと怒る。(その方針が)しっかりしているので、やりがいを感じますね。ちゃんと、最後までプレーを見てくれているんだなと思います。

 亀山 その矢野監督をぜひ、胴上げしてもらいたい。

 西勇 そうですね。本当に矢野監督だから(阪神に)来たかったというのもありますから。矢野監督のためにと思います。選手みんなが「あの人が言うんだったら正解」と思えるくらいの監督なので。

 亀山 今季は東京五輪もあって日程も変則だけど、頭は切り替わっている?

 西勇 まあ別に、去年と9日間、変わっただけなので。9日間、調整ペースを早めたらいいだけなので、気にならないですね。

 亀山 逆に五輪期間明けの方が難しくなりそう?

 西勇 どうなるのかとワクワクしますね。休ませてもらっていいのかなと。調子が下がっている人は上がるかもしれないし、その逆もまたしかりなので。面白い時期と思いますよね。たとえば前半、ものすごく投げて疲れたけど、休養があって、もう一度となれば。自分がどう転がるのか。

 亀山 頼もしい限りだね。では、最後に読者の皆さんにメッセージを。

 西勇 1年間、戦う上で、一番必要なのがファンの皆さんの声援だと思っています。どんな時も、ともに戦ってもらって、一緒にすべての時間を共有できるように。僕たちも一生懸命、頑張るので、応援、よろしくお願いいたします。

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