仕掛けどころ難しいマラソンコースに大迫の経験生きる 高岡寿成さんが語る展開と上位進出の可能性

[ 2021年8月8日 05:30 ]

バルセロナ五輪以来となるメダル獲得を狙う(左から)服部、大迫、中村
Photo By スポニチ

 東京五輪最終日の8日に行われる花形種目の男子マラソン。日本は大迫傑(30=ナイキ)、服部勇馬(27=トヨタ自動車)、中村匠吾(28=富士通)の3人が、92年バルセロナ五輪以来となる29年ぶりのメダル獲得を狙う。元日本記録保持者でシドニー五輪男子1万メートル7位入賞の高岡寿成さん(50)に5月のテスト大会での視察を踏まえ、札幌のレース展開や日本人選手の上位進出の可能性を聞いた。

 日本選手の中で最もメダルに近いのは大迫でしょう。出場日本人選手の中で最速の2時間5分29秒の記録や3選手の中で最も練習ができているというのもありますが、やはり五輪という大舞台では彼の経験が大きいと思います。

 五輪はペースメーカーがおらず、駆け引きが難しいと言われます。私も初めてペースメーカーのいないレースをしたときは同じような印象を持ちました。大迫はその点でマラソンという種目をよく理解しています。20年3月の東京マラソンでは、集団から離れても自分の体力とレース状況を冷静に判断し、後方で足をためて射程圏内を維持。最後には追いついて日本記録(当時)を樹立したうまさがあります。

 MGCでは優勝候補筆頭という重圧があったと思いますが、ここまで来れば海外経験、過去のマラソンの結果、暑さ対策の経験が今度は強さに変わってくるはずです。

 服部はテスト大会を走りましたが、春のトラックレースには出ておらず、練習がどうなっているのか心配な部分はあります。マラソン練習を積めているのであれば楽しみな存在の一人です。

 今年のニューイヤー駅伝では心配ないと思った中村は、2月のびわ湖毎日、テスト大会と故障で欠場しました。中村は暑さへの耐性やMGCでも見せたように、何度もスパートできる粘りが持ち味で、うまく調整できていれば良いですが、マラソンはごまかしが利かない競技。その点が不安材料になります。

 札幌のコースについて私が感じた特徴としては平たんなところが多く、駆け引きのきっかけとなる上りや下りがないので、勝負のポイントが見つけにくいと思いました。仕掛けどころといったレースがどこで動くかの判断が難しいです。

 北大構内の7回のカーブが特徴的ですが、過去の五輪と比較してもそれほどテクニカルなコースだとは思いません。周回を重ねるごとに人数が絞られ、1、2人で走るなら道幅が狭い分だけスピード感が感じられるコースです。ただ、7回のカーブでは良い位置取りをしようとすると詰まってしまい、ストレスを感じる選手もいると思います。

 日本人選手は毎年のように北海道で合宿を行っているので、夏の気候や雪国特有の硬い路面にも十分対応はできるはずです。沿道での応援はありませんが、日本語の標識やなじみのある土地で精神的に落ち着けるという地元の利もあります。日本選手の健闘を期待したいです。(男子マラソン元日本記録保持者、カネボウ陸上部監督)

 ◇高岡 寿成(たかおか・としなり)1970年(昭45)9月24日生まれ、京都府木津川市出身の50歳。00年シドニー五輪で男子1万メートル7位。01年にマラソンへ転向し、02年シカゴマラソンで2時間6分16秒の日本記録をマーク。3000メートル、5000メートル、1万メートルの元日本記録保持者。15年からカネボウ陸上競技部監督を務める。

続きを表示

2021年8月8日のニュース