萌寧の強さの理由 天賦の才「絶対距離感」が生む正確なショット&妥協なき努力…1日10時間の猛練習

[ 2021年8月8日 05:30 ]

東京五輪第16日 ゴルフ女子最終日 ( 2021年8月7日    埼玉・霞ケ関CC=6648ヤード、パー71 )

<ゴルフ女子最終日>16番、ティーショットを放つ稲見(撮影・会津 智海)
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 稲見の強さの源はどこにあるのか。奥嶋誠昭コーチは「一番いいのは距離感。音楽で言う絶対音感みたいな絶対距離感、2、3ヤード刻みくらいで打てる感覚がある」と言う。再現性の高いスイングで、自分の思った距離を打つことができる。正確なショットは持って生まれたものなのだ。

 その天賦の才能を並外れた練習量で磨いた。9歳でゴルフを始め幼少期は荒川河川敷で育った。ゴルフ界のレジェンド青木功も若手時代に修行した東京都足立区の「新東京都民ゴルフ場」。ジュニア(高校生以下)は2100円で回り放題という全9ホールのコースに毎日のように通った。夜明けとともにスタート。一旦帰宅し、学校が終わると再びコースに現れ、日が暮れるまで練習場でボールを打ち続けた。

 小学生時代に関東大会で優勝、全国大会でも上位に入った稲見は本格的にゴルフに打ち込むため、中1の時に都心の池袋から練習環境に恵まれた千葉県四街道市に家族とともに転居。千葉市の「北谷津ゴルフガーデン」に拠点を移した。以来、年中無休で練習場に通っている。1日の練習時間は10時間に及ぶ。

 父・了(さとる)さんによると「体調を崩して倒れた時も練習はしていました」という。プロ転向後もツアー開催中の月曜日はトレーニング、火曜日からはコースに入って練習という生活を続ける。

 ゴルフに関しては妥協しない。奥嶋コーチは「少しでも(球が)曲がるのは嫌だし、ちょっとでも気持ち悪いのは嫌」と証言する。

 「世界一になるには、世界一練習しないといけない」という信念を持つ稲見。「天才+努力=五輪メダル」の方程式を完成させた。

 【稲見 萌寧(いなみ・もね)】

 ☆生まれ 1999年(平11)7月29日生まれ、東京都豊島区出身の22歳。

 ☆サイズと血液型 1メートル66、58キロ。A型。

 ☆学校 日本ウェルネススポーツ大学在学中。

 ☆ゴルフ歴 9歳で始める。18年プロテストに合格し、19年センチュリー21レディースで初優勝。今年5勝を含め、ツアー通算7勝。

 ☆名前 母・直子さんが名付けた。「寧にはやさしいという意味があるので、やさしい子になってほしいと願ってお母さんがつけてくれました」

 ☆拠点 池田勇太や市原弘大らがジュニア時代に腕を磨いた千葉市の北谷津ゴルフガーデン。

 ☆トレーニング オフにキックボクシングジムに通って下半身強化。

 ☆ネイル 東京五輪に合わせて五輪マークと日の丸をイメージしたカラーのマニキュアを手に施した。「よく見たら、オリンピックなんだっていう“隠れネイル”的な感じ」

 ☆今後の目標 日本ツアー永久シード。

 《父・了さんも歓喜》千葉県内の自宅で吉報を聞いた稲見の父・了さんは「去年だったらこの舞台に立てなかった。メダルを獲れたのは正直うれしいです」と喜んだ。過去には「小学校の頃に、友達に“おじさんのやるスポーツだ”と言われたことがあって辞めたいと言い出したことがあった」という。今後については「現状は海外(ツアー)に行く予定もないし、まだ目標はたくさんある。これからも2人で頑張っていきたいですね」と語った。

 ▼服部道子コーチ 自分のプレーに徹し、4日間堂々としていた。その中でも楽しんでいた姿を頼もしく感じた。ゴルフへの熱い気持ちを凄く感じた。

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2021年8月8日のニュース