スピースV 大脱出!13番で起死回生の“練習場ショット”

[ 2017年7月25日 05:30 ]

米男子ゴルフツアー 第146回全英オープン最終日 ( 2017年7月23日    英国サウスポート ロイヤルバークデールGC=7156ヤード、パー70 )

優勝トロフィーを掲げるスピース
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 ジョーダン・スピース(23=米国)が初日からの首位を守って完全優勝を飾った。13番パー4では歴史に残る“練習場ショット”を見せ、69で回って2位に3打差の通算12アンダー。23歳11カ月でのメジャー3勝はニクラウスに次ぐ歴代2位の年少記録となり、8月10日開幕の全米プロ選手権(クウェイルホローC、ノースカロライナ州)では、史上最年少の生涯グランドスラムに挑む。松山英樹(25=LEXUS)は72とスコアを落とし、通算2アンダーの14位に終わった。

 「最初の12ホールの話は飛ばしてもいいかな?」。会見場に現れた王者はそんなふうに口火を切って笑わせた。

 とはいえ、そこに至るまでの話も少しは必要だろう。安全圏とも思われた3打差の首位で迎えた最終日は大乱調だった。メジャーの重圧、最終日のバックナインで5打差を守れず敗れた昨年のマスターズのトラウマもあった。12番まで3つスコアを落とし、悪い流れのまま13番に入った。

 「左を避けたかった」というティーショットは、フェアウエーから120ヤードも右にそれた。深いブッシュの根元にぶすり。たまらずアンプレアブルを宣言した。どこか球をドロップするのに適した場所はないものか。小高いマウンドの上、はるか遠くにグリーンを見て思案に暮れていると、はたと気がついた。「練習場はOB?と競技委員に聞いたら、答えはノーだった」

 ところがそんな場所からの距離表示はヤーデージブックにも表記がない。グリーンまでキャディーは230ヤード、スピースは270ヤードと意見が割れた。最後はキャディーを信じ、3Iで打った3打目はグリーン右手前に届いた。79年大会を制したセベ・バレステロス(スペイン)が見せた“駐車場ショット”をほうふつさせる“練習場ショット”だった。

 30分を費やした13番で首位からは陥落したが、ダブルボギーも覚悟したこのホールをボギーで切り抜け、全てが一変した。14番からバーディー、イーグル、バーディー、バーディー。欠場中のタイガー・ウッズ(米国)もツイッターで「なんてカムバックだ」と驚がくした猛チャージで、自作自演の最終日は完結した。

 これで世界ランキングは松山を抜いて2位に再浮上。得意のパットには本来の強さが戻ってきた。「生涯グランドスラムは人生のゴール」。劇的な全英制覇でスピースがその野望に王手をかけた。

 ≪史上2位年少3冠≫スピースは史上2番目の若さでメジャー3冠を達成。8月の全米プロ選手権に勝てば史上6人目のグランドスラムを最年少で達成する。メジャー3冠はスピースで18人目。そのうちパーマー、トレビノ、T・ワトソンら13人はグランドスラムに届いていない。マキロイはマスターズ、ミケルソンは全米オープンに勝てばグランドスラムとなる。

 ▽バレステロスの駐車場ショット ロイヤルリザム・アンド・セントアンズGCでの79年大会。22歳のバレステロスは最終日の16番パー4を2打差の首位で迎え、1打目を大きく右に曲げて臨時駐車場に打ち込んだ。ここからグリーンに乗せてバーディーを奪う奇跡的なリカバリーを披露。通算1アンダーでメジャー初優勝を飾った。20世紀以降の全英最年少Vで、今回のスピースはそれに次ぐ若さでの優勝となった。

 ▽アンプレアブル プレー不可能であることを宣言すること。プレーヤーは一打罰を付加して3つの救済処置の中から1つを選ぶ。ゴルフ規則28―bは「ホールと球があった箇所を結んだ線上で、その箇所よりも後方に球をドロップ。この場合には球のあった箇所より後方であればいくら離れても距離に制限はない」としている。

 ◆ジョーダン・スピース 1993年7月27日、米テキサス州ダラス生まれの23歳。ジュニア時代から期待され、16歳で初出場した米ツアー大会で16位に入った。テキサス大へ進み12年にプロ転向。19歳だった13年7月にツアーで82年ぶりとなる10代での優勝。15年はマスターズ、全米オープンとメジャー2連勝。8月に世界ランク1位に立った。勝負強いパットが武器。1メートル85、84キロ。

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2017年7月25日のニュース