五輪とパラ五輪、アスリートの違いはあるのか?車いすバスケ日本代表の挑戦 

[ 2017年7月25日 10:30 ]

昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックで試合後に話し込む日本代表の及川監督(右)と京谷コーチ
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 世界的に見て五輪とパラリンピックの価値が近づく現在、1つの疑問がずっと頭の中にあった。アスリートの基礎体力。果たして競技に必要な筋力は限界までビルドアップされているのか?パラアスリートの場合、障がいの部位や程度によっては、その限界がどこにあるのか分からないケースはあるだろう。もちろん、取り巻く環境の問題で「やりたくてもできない」という場合もあるに違いない。同じ世界の頂点を狙うアスリート同士とはいえ、五輪との「違い」は否定できないのではないか?という思いだ。

 そんな疑問に答えを出そうとしているのが、日本男子車いすバスケットボールだ。及川晋平ヘッドコーチが説明する。

 「これまではトレーニングをしたらコンディショニングという流れで、疲労を取り除く方向を考えていた。今から目指していくのは限界まで積み上げていく本格的なトレーニングです」

 今年2月から身体のケアではなく、練習を構築するトレーナーと初めて契約。健常者の日本代表と情報も共有しながら「試合時間内に70回のディフェンス、70回のオフェンスを繰り返す。つまり140本のダッシュをトップスピードで繰り返せる体力」(及川ヘッド)を身につけるのが目的だ。今年10月の合宿からは1日4部練習も行う予定という。

 昨年のパラリンピック・リオデジャネイロ大会は技術、戦術的に磨き上げた自信を持ちながら、ロンドン大会と同じ9位。チームを解体し考えたのが「世界のバスケットに追いつくのではなく、日本じゃないとできないバスケットを構築する」という方向性だった。サイズで劣る日本が勝負するポイントはクイックネス。コート全体を使って勝機を見いだしていくためには、基礎体力の向上が必要という結論に至ったのだ。

 このトレンド、実は健常者の世界とシンクロしている。例えば15年W杯で南アフリカを下したラグビー日本代表。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチの徹底的なフィジカルトレーニングは、選手たちに「ブラック企業」と呼ばれた。例えば昨年のリオデジャネイロ五輪で全階級メダル獲得を成し遂げた柔道男子。井上康生監督は畳の上だけでない体作りを推奨し、格闘技の原点に戻った。04年アテネから五輪に採用されたレスリング女子も、またしかり。いずれも心・技・体の「体」を重視し、世界で結果を残したのだ。

 パラスポーツが「見る」スポーツに成長していけるかどうかは、20年東京の成功の1つのカギを握る。そしてその価値をもたらすのは、健常者も障がい者も関係ない、ただスポーツという名の下に鍛え上げられたフィジカルとテクニックの到達感ではないだろうか。新たなベクトルに走り始めた車いすバスケット日本代表は、8月31日から東京にオーストラリア、英国、トルコを迎えた国際大会で、そのコンセプトを披露する。(首藤 昌史) 

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2017年7月25日のニュース