【世界のアスリート】10歳で身長183センチ いじめ乗り越えた“暁”の心

[ 2016年8月13日 12:12 ]

オーストラリア・女子バスケットボール代表のキャンベージ(AP)

リオデジャネイロ五輪バスケットボール・女子

 父がナイジェリア人で母はオーストラリア人。英国ロンドンで生まれたが生後3カ月で両親は離婚し、母に連れられて南半球にやってきた。

 10歳で身長は1メートル83。さらに、その肌の色ゆえに学校ではいじめられた。友達ができないことを心配した母はバスケットボールの存在を娘に教える。少なくとも、そこでは背が高いことでいじめられることはなかったからだ。

 11日に行われた女子バスケットボールの日本―オーストラリア戦。観戦していた全ての日本国民を敵に回したのが2メートル3のリズ・キャンベージ(24)だった。第4Q序盤で16点のリードを追う展開。しかし彼女は世界ランク2位の母国を引っ張り、37得点10リバウンドを稼いで日本の野望を打ち砕いた。

 大きい?いや、小さくて繊細なのだ。体ではなく心が…。米プロリーグ、WNBAに一時所属していたがホームシックで帰国。抑うつ状態に陥ることも珍しくはない。正義感が強く、顔を黒く塗った写真を投稿した代表のチームメートを「とても不愉快です」と批判。するとたちまち「大げさだ」と叩かれてまた落ち込んだ。それでも「人種偏見に対して誰かが声を上げなければ何も動かない」とキャンベージの心はようやく太く大きくなってきた。

 ロンドン五輪で、五輪の女子バスケットボール史上初のダンク・シュートを決めた長身センター。「子供には“いじめはダメ”と教えるでしょう。大人にだって同じ。間違っていることに対してちゃんと向き合えるようになった自分は幸運だと思う」。日本代表の愛称にもなった、夜明けを意味する「暁(あかつき)」という言葉は、キャンベージの心をも象徴していた。

 ◆リズ(エリザベス)・キャンベージ 1991年8月18日、ロンドン生まれの24歳。11年のオーストラリア国内リーグでMVP。11年WNBAドラフトの全体2番目にタルサ・ショックに指名され渡米。球宴にも出場したが1シーズンで退団。昨季は中国リーグでプレー。2メートル3、98キロ。

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