もう6年 まだ6年…安倍首相の答弁でW杯釜石誘致大きく前進

[ 2013年3月15日 06:44 ]

衆院本会議で答弁する安倍首相

 【連載 ラグビーの町・釜石は今…5】連載中の、思いもよらないニュースだった。

 13日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相がW杯の釜石開催に関する質問に答えて言った。

 「復興を世界にアピールする良い機会になる。東北の皆さんに、勇気を与える大会にしていきたい」

 「釜石」という地名を具体的に語ったわけではないが、開催を支援する準備があることを表明したと考えていい。予算の面で「足が止まって」いたW杯釜石誘致が、大きく前進した。

 質問に立ったのは、みんなの党の柿沢未途議員だった。東京・麻布高ラグビー部出身の柿沢氏は質問前に、釜石市教育委員会の「国体・ラグビーワールドカップ誘致推進室」に直接、電話してきたという。誘致に関する現状を聞いた柿沢氏は、国会質問の予定を告げて電話を切った。

 対応した同推進室の和田利男室長(56)は率直に「うれしい」と話した。昨年6月に国の復興交付金から「調査費」が計上され、現在はW杯開催を想定したスタジアムなどの「基本計画」を策定している。

 今月末に複数の計画案ができあがる予定だが、「調査費がついたのと、建設のゴーサインは別の話。手放しでは喜べないと思っていた」だけに、「まだ、気は抜けないけど、前進はしたと思う」と話す。手詰まり状態だった誘致活動には、大きな光となった。

 釜石市の開催計画には課題も多かった。常設3000人の客席は仮設スタンドで1~2万人規模にするとしても、サブグラウンドの整備や、東京から電車で約5時間かかるアクセス、宿泊施設の少なさなどが問題になる可能性があった。

 誘致室は沿岸・内陸部の都市と連係することで解消する構想だが、会場決定にかかわるラグビーワールドカップ・リミテッド(RWCL)とW杯組織委員会が、その点をどう判断するかが、未知数だった。それらも、国の支援を受ければ連係が容易になるはずだ。

 それでも、和田室長が苦慮するのが「釜石市民のとらえ方と、そうでない人のとらえ方の違い」だ。W杯の是非の前に、生活再建で精いっぱいの釜石市民と、「釜石開催の意義」を訴える市民以外の支援者との熱気の違いが、どう作用するかが読めないからだ。

 しかし、今はそれでいいのではないかと思う。釜石市民は復興に全力を尽くせばいい。被災していない人は、釜石市民をそっと見つめながら、外から機運を盛り上げる活動をすればいい。焦る必要はないのだ。

 和田室長は言う。

 「W杯が行われる2019年には、復興も形になっていると思う。わたしたちは、その時に、ああ、いい運動を、いい活動をしてくれてよかったなと思われればいいと思っている」

 W杯日本開催まで、あと6年。もう6年しかないと思うか、まだ6年もあると思うかは、置かれた立場によって違っていいはずだ。

=おわり

 ◆W杯開催候補会場 日本ラグビー協会がW杯開催に立候補した時の入札文書に明記したのは札幌、仙台、横浜、豊田、大阪、神戸、福岡の7都市と国立競技場、秩父宮ラグビー場の計9会場。ただ、組織委は「この9会場は決定ではない」としている。これ以外に、ラグビーにゆかりのある熊谷市、東大阪市、釜石市が公式に立候補を表明し、招致室、誘致室を設置して活動をしている。

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