全柔連に“上納金”助成金の一部を半強制徴収していた

[ 2013年3月15日 06:00 ]

助成金の不正徴収問題で会見後に一礼する全柔連の上村会長

 柔道界にまた新たな問題が浮上した。全日本柔道連盟(全柔連)の上村春樹会長は14日、東京・文京区の講道館で記者会見し、日本スポーツ振興センター(JSC)から助成金を支給された指導者の一部から強化委員会が金銭を徴収し、海外遠征での打ち上げなどに使っていたことを明らかにした。不適切かどうかを含め、今後調査を進めるとしたが、帳簿などが残っておらず、使用実態は不明。関係者によると残額は約2800万円にのぼるという。

 上村会長は、全柔連の会計とは別に強化委員会独自の“集金制度”が存在したことを明らかにし「第三者委員会の先生方に提言いただいた後に、こういうことが出てきて残念だし、皆さんにご心配、ご迷惑をかけた」と謝罪。事実関係確認のため、外部有識者に調査を依頼する考えを示した。

 上村会長の説明によると、現在JSCの助成金(年間120万円)を受け取っている47人(昨年4月時点)の指導者の一部から、それぞれ年間40万円程度を集め、強化委員会が預金。海外遠征の打ち上げの飲食代のほか、合宿地の岩手・釜石が東日本大震災で被災した際に義援物資を購入するためにも使ったという。

 89年頃から強化委員会内に「留保金」の制度を作り、コーチが所属企業などから受け取った遠征の餞別(せんべつ)などを集めて、代表チームのために利用していたが、10年以降は世界選手権でメダル獲得者が増加し、助成対象の指導者も増えたため金額が大きくなったことも明かした。

 「互助会的にお願いしていただいていたと聞いた」と上村会長は説明したが、主導したのは強化委員長クラスで上下関係の厳しい柔道界では半強制的だった可能性もある。テレビ解説の報酬の3分の1を半ば強制的に指定の口座に収めさせられた人物もいたという。昨年11月以前は帳簿も存在せず、ずさんな管理下で私的流用がなかったとは証明できない。個人名義の口座で集めていた時期があり税制上の問題が発生する可能性もある。

 助成金はトップ選手と指導者が競技力向上に専念できるようにするのが目的。寄付などが禁じられているわけではないが、JSCの担当者は「競技力向上のために支給する個人助成から直接徴収して接待費などに充てていたら目的外使用」との見解を示した。いずれにせよ、体質改善中の柔道界に浮上した不透明マネーの存在は、さらなるイメージダウンにつながるのは必至の情勢だ。

 ▼税理士・跡部保美氏 一般的に見ても、個人口座を設けているシステムは、公益財団法人の在り方としてはふさわしくない。課税されてもおかしくないと思われます。

 ▽選手・指導者スポーツ活動助成 スポーツ振興基金を使った助成事業で、JOCと競技団体が推薦した国内トップレベルの選手や指導者が対象。競技力の向上を目的に、選手はエリートAが年間240万円、同Bは120万円を与えられる。AとBはオリンピックや世界選手権の成績に基づく得点で分類される。エリートA、Bの指導者にも年間120万円が支給される。昨年4月時点では指導者、選手合わせて668人。柔道では指導者47人、選手40人が対象となっていた。

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2013年3月15日のニュース