波乱の理事選…貴乃花親方“造反票”で逆転当選!

[ 2010年2月2日 06:00 ]

元横綱大鵬の納谷幸喜氏の自宅を出て間垣親方の車を誘導する貴乃花親方

 日本相撲協会の理事選挙が1日、東京・両国国技館で行われ、開票の結果、貴乃花親方(元横綱、本紙評論家)が初当選。立浪一門から選出された現職理事の大島巡業部長(元大関・旭国)が落選する波乱の結果となった。当選ラインは10票で、7票と伝えられていた貴乃花親方に立浪一門から2票、二所ノ関一門から1票の“造反票”が流れた。7期目を目指したベテラン理事の落選で、角界を支えてきた一門制度の根幹を揺るがす事態となった。

 新たに貴乃花親方を支持した“造反組”3人について、立浪一門の関係者は「貴乃花親方に投票したのは立浪親方(元小結・旭豊)と伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)ではないか」と疑いの声を上げた。別の親方も「宮城野親方(元十両・金親)が怪しい」といぶかしんだ。
 そもそも立浪一門は、昨年12月の予備選挙で一度は大島親方と伊勢ケ浜親方を選出した。だが、初場所で大関・千代大海が引退したことに伴い、空き株だった「浅香山」を自らを支持する票に加えた友綱親方(元関脇・魁輝)が一転、出馬を表明。伊勢ケ浜親方が出馬を辞退するなど、一門内が混乱に陥っていたのも確か。立浪親方は本紙の取材に対し「私は大島親方に入れました」と否定。伊勢ケ浜親方も「(選挙結果は)不本意です。(会の内容は)理事さんに聞いて」と造反を否定しつつ淡々と話した。
 まさかの展開だった。評議員111人による投票が終わり、厳正な開票を済ませた大山選挙管理委員長(元幕内・大飛)が獲得数の多い順に名前を読み上げた。11票の武蔵川理事長に始まり、貴乃花親方は10票で初当選が決まった。そして、最後に残ったのが8票の大島親方だった。戦前では苦戦が予想されていた貴乃花親方が10票に到達。立浪一門は大島親方に入るはずだった2票が、二所ノ関一門からは1票が貴乃花親方に流れた。
 一門の重鎮の落選に立浪一門は大いに揺れた。開票終了後、伊勢ケ浜親方ら9人は会場の大広間の横にある別室に集まって約40分間、緊急会合を行った。だが、数人が途中で退室するなど、各親方の動揺は隠せない。熊ケ谷親方(元幕内・竹葉山)は「落ち込んで話せないよ」と意気消沈。春日山親方(元幕内・春日富士)も「うちの一門からそういうことをやるんだなという感じ。無記名は自由だが…」と渋い表情を浮かべた。
 結束力が固いと言われていた二所ノ関一門でも造反者が出た。最終的な票の分担が行われた前日の会合では琴光喜と秀ノ山親方(元関脇・琴錦)が途中退席する場面があった。親方衆の間では「貴乃花親方に投票したのは秀ノ山親方」と指摘する声も出るなど、各一門で疑心暗鬼の声が広がっている。
 この日の立浪9人衆の“反省会”では「このままでは次回の選挙はどうなるんだ」「一門としてやっていけない」などの意見も飛んだという。信頼関係が完全に崩壊した状態では、一門の結束など望むべくもない。貴乃花親方の初当選は、旧態依然とした「一門」の意義を根底から覆す結果となった。

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2010年2月2日のニュース