相撲素人大学生が新弟子検査

[ 2008年3月2日 06:00 ]

九州共立大から受検した木戸

 日本相撲協会は1日、大阪市内で春場所(9日初日、大阪府立体育会館)の新弟子検査を行い、時津風部屋の力士急死問題で揺れるなか、例年並みの68人が受検した。なかでも異色の存在が九州共立大から受検した木戸喜崇(22=春日山部屋)だ。相撲経験がない大学生の受検は珍しく、22歳の相撲1年生の勇気ある挑戦は注目を集めそうだ。合格者は内臓検査などの結果を経て、春場所初日に発表される。

 本人にしてみれば「相撲でも、やってみようか」感覚かもしれない。ちょっと前ならそんな気楽な受検もありだった。しかし、今は力士急死問題で揺れ、新弟子確保が困難とされる時代。「みんな体が大きい人ばかりでびっくりしました」。50人近くの報道陣でごった返す新弟子検査の会場で、最年長22歳の木戸は淡々と印象を語った。

 受検者68人の中で大学出身は3人。しかし、他の2人と違って木戸は相撲経験が全くない。これまでは大学相撲で実績を残した者が「就職先」として角界入りするのが主流だった。木戸は柔道2段の腕前だが、相撲未経験の異色入門。それでも「この世界は実力が優先される。時津風問題も特に気にしていません」と前を向いた。

 大学では工学部に籍を置き、将来は建築の分野に進む夢があったという。転機は一昨年11月、角界入りを誘われた知人と九州場所を観戦した時に「やってみないか」と声をかけられた。しばらくは踏ん切りがつかなかったが、今年2月、春日山親方(元幕内・春日富士)の「頑張れるか」の問いに「頑張れます」と即答した。最初は心配だったという師匠も「本人のやる気を尊重した。厳しい世界だが、挑戦するつもりで頑張ってほしい」と勇気ある決断にエールを送った。

 春日山部屋はこの日、木戸のほかに15歳の新弟子2人も受検した。7歳年下と同期になるのは一般企業では体験できないことで、師匠も「中卒や高卒の子供との共同生活で協調してやっていけることが大事」と指摘する。だが22歳の相撲1年生は「一般の会社は今でなくても行けるし、若いうちにしかできないことだから」と語る。時津風問題が急展開をみせるなか、異色派力士の挑戦が始まった。

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2008年3月2日のニュース