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東京V「思いがあふれ出た」16年ぶりJ1! 5万人見つめる国立で後半51分にドラマ 主将も涙止まらず

[ 2023年12月3日 04:30 ]

J1昇格プレーオフ(PO)決勝   東京V1―1清水 ( 2023年12月2日    国立 )

<東京V・清水>喜ぶ東京Vイレブン(撮影・西海健太郎)
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 東京Vが劇的な幕切れでJ1最長の16年ぶりJ1復帰を果たした。PKを与え、清水に先制されたが、後半アディショナルタイムに獲得したPKをFW染野唯月(22)が決め1―1で引き分け。シーズン成績上位だったため、規定により昇格した。5万3264人の大観衆が詰めかけたオリジナル10同士の一戦。93年のJリーグ開幕戦を戦った国立競技場で、かつての名門が復活への第一歩をしるした。来季J1には東京都を本拠地とする全3クラブが初めてそろい踏みする。 

 5万人以上のサポーターの誰が、こんな結末を予想しただろうか。劇的な幕切れで決まった東京Vの昇格。下部組織からクラブ一筋のMF森田主将は「あと一歩の年もあり、そういう姿も見てきた。15年分の思いがあふれ出た」と涙が止まらなかった。

 今季2敗を喫した清水に前半から押し込まれ、森田がPKを与え後半18分に失点。引き分けでも昇格できる優位性を生かせないまま、0―1で時間だけが過ぎた。冬の時代がまだ続くのかと思われた後半アディショナルタイムだった。ドリブルした染野が倒されてPK。「今までで一番緊張した」という染野が51分、ゴール右に突き刺した。かつて、華々しくJリーグ開幕戦を戦った場所で、返り咲きを決めた。

 三浦知良、ラモス瑠偉らスター選手を擁し、93年から2連覇。Jリーグの象徴だったクラブは、読売新聞が撤退した98年から歯車が狂い始めた。経営難に伴って成績も落ち込み、05年に初の降格。一度はJ1に戻ったものの、1年で再びJ2へ。09年には筆頭株主の日本テレビも退き、存続危機に見舞われた。

 経営陣の混乱が収まったのはここ3年ほど。それでも人件費はJ1で優勝した神戸の約10分の1となる4億9000万円(22年)でJ2でも13番目。大学生や他チームで出場機会に恵まれない選手を期限付きで獲得するなど、お金をかけずに工夫して戦力を整えた。そこに道筋をつけたのが昨夏に就任した城福監督だ。個人技主体の読売クラブスタイルに組織的なサッカーを融合。J2最少の31失点と守備を磨き、堅守から素早い切り替えで攻撃へつなげるスタイルを徹底した。先発の平均年齢は相手より4歳以上若い25・09歳で、値千金の得点を挙げた染野は鹿島からの期限付き移籍。見事にまとめ上げた指揮官は「絶対に上げる覚悟できた。チーム一丸となって毎日いい練習をした」と、誇らしげに言った。

 紆余(うよ)曲折を経てたどり着いたJ1の舞台。「1年で落ちたら意味ない。選手だけでなくクラブが大きな覚悟を持って臨んでいきたい」と森田が全員の思いを代弁した。名門の第2章が始まる。

 ≪J2最少31失点≫東京Vは今季リーグ戦42試合で22チーム中最少の31失点。57得点は9位ながら全試合フル出場のGKマテウスを中心に守り勝った試合が多く、無失点23試合も最多だった。22試合で先制し、19勝2分け1敗と手堅い試合運び。リーグ戦終盤の10試合は計6失点で6勝4分けの負けなしだった。

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