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【オシム分析2】どちらが“王者”かわからない展開

[ 2014年7月1日 10:41 ]

チリ戦後半は精彩を欠いたネイマール (AP)

 【少しだけ幸運だったブラジル】

 ブラジルが危ないところで、お祭りを台なしにされるところだった。開催国で優勝候補本命がベスト16で敗れたら、W杯の盛り上がりが損なわれるだけでなく、大会直前まで続いた抗議デモの再燃など各方面に影響が広がっていたかもしれない。

 チリ戦は今大会のベストゲームの一つ。レベルが高いという意味ではなく、チリが予想に反して、果敢に抵抗して、世界中を驚かせた。そのサプライズの大きさの意味でよいゲームだった。1次リーグ第2戦のメキシコ戦で苦戦(0―0)したが、似たタイプのチリにもてこずった。ボールを持つ時間が長かったのはチリ。ブラジルはカウンターとセットプレーで対抗する。どちらが「王者」か分からないような展開だった。ただ、チリはボールを支配するが、いい形でシュートまでいけない。押されてはいるものの、全体としてはブラジルのペースで、ネイマールが躍動し、セットプレーから先制したところまではブラジルの思い通りだった。しかし、信じられないミスから同点に追いつかれると、気温の高さや疲労から足が止まり始めた。いつかはネイマールが試合を決めてくれるのだろうと期待するが、救世主はなかなか現れない。足の打撲のためか、後半の彼は精彩がなかった。

 ブラジルはナーバスになり、立て続けにイエローカードをもらった。ホスト国のプレッシャーからか、年齢が若いせいか、メンタル面で不安定な印象がある。闘争心を出すのはいいが警告が多すぎる。勝ち進むこれから先、出場停止等の影響が心配だ。

 延長終了間際にチリのピニージャのシュートがクロスバーを叩きほんの数センチでブラジルは負けてしまうところだった。PK戦。最初のキックを決めたダビド・ルイスと5人目のネイマールは落ち着いていた。GKのジュリオ・セザールもよく守った。しかし私に言わせれば、ほんの少しだけブラジルの方がチリより幸運だっただけだ。

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2014年7月1日のニュース