×

北嶋号泣「これが優勝の景色なのか」

[ 2011年12月4日 06:00 ]

<浦和・柏>優勝を決め涙ぐむ柏・北嶋

J1第34節 柏3―1浦和

(12月3日 埼玉)
 あふれ出る涙が止まらなかった。運命の浦和戦。出番はなかったが、優勝の瞬間、柏ベンチにいたFW北嶋は周囲をはばからず号泣した。アウェーにもかかわらず、埼スタの一角を黄色く染めたサポーター。目の前で歓喜する仲間たち。「これが優勝の景色なのか、と。やみつきになる。優勝クラブはこの景色がまた見たくなるから強くなるんですね」。その瞬間をかみしめていた。

 北嶋なくして、初優勝はなかった。ミスターレイソルと呼ばれる男が、3月の開幕ではベンチも外された。それでも腐らず練習の虫と化した。力ずくで出番をつかみ、通算9得点をマーク。全盛期のような目を見張るスピードはない。だがその分「去年くらいから自分の一つ一つのプレーが説明できるようになった」。随所で客観的な視点や相手守備との駆け引きのうまさが光った。プレーには円熟味が増した。

 実に12年越しの悲願だった。00年第2ステージ最終節。勝てば優勝、引き分ければV逸という一戦を、常勝軍団の鹿島と戦った。結果はスコアレスドロー。年間最多勝を挙げながら優勝を逃した屈辱感。「またすぐ獲れると思っていたら、いつの間にか11年たってたよ。なかなか、踏み出せなかった次の一歩をようやく踏み出せた」。万感の思いがこもっていた。

 優勝の瞬間、ピッチには立てなかった。それでも満足感が欠けることはなかった。泣きながら飛びついて来た同じFWの工藤を全身で受け止めた。「FW陣は工藤も(田中)順也もいいライバル。このチームは本当にいとおしい。澄んだ空気が流れていて。足の引っ張り合いの競争ではなく良い競争がある」。切磋琢磨(せっさたくま)し、たどり着いた頂点。全ては報われた。

 3月の東日本大震災には「サッカーをやってていいのか」と心を痛めた。だが、サッカー選手としてやるべきことについて「それはさまざまな思いをピッチで表現すること」と自身に言い聞かせ、以前にも増して練習に打ち込んだ。北嶋が出番をつかみ始めたのはちょうどリーグが再開した4月から。以来、日本の復興を自身に重ねてきた。

 もちろん夢に終わりはない。「去年、J1昇格が決まったときからトヨタ・クラブW杯の優勝が夢だったんです」。まぶたの腫れた目をうれしそうに細めていた。

 ◆北嶋 秀朗(きたじま・ひであき)1978年(昭53)5月23日、千葉県生まれの33歳。市立船橋高では3年連続で全国高校選手権に出場し、通算16得点で2度優勝。97年柏に入団。03年清水に移籍して06年柏に復帰。J1通算225試合58得点、J2通算41試合11得点。日本代表3試合1得点。愛称はキタジ。1メートル82、77キロ。利き足は右。血液型O。

続きを表示

2011年12月4日のニュース