ドラマ「13(サーティーン)」 桜庭ななみの深遠な表現

[ 2020年8月6日 09:43 ]

フジテレビ系のドラマ「13(サーティーン)」で百合亜を演じる桜庭ななみ(C)東海テレビ
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 【牧 元一の孤人焦点】女優の桜庭ななみが主演するフジテレビ系のドラマ「13(サーティーン)」(土曜後11・40、全4話)が1日から始まった。

 英・BBCが2016年に放送して人気となったドラマのリメーク。13歳から13年間行方不明となっていた女性・百合亜が主人公のサスペンスで、複雑な内面の百合亜を演じる桜庭の深遠な表現が見どころだ。

 ドラマは百合亜が素足で道路を歩くシーンでスタート。左手首には鎖が千切れた手錠。警察に保護されると「ずっと監禁されてました」と打ち明ける。

 最初は表情が死んでいる。目の前で人が動いても反応がとぼしい。時折、戸惑いやおびえをうかがわせる。刑事が監禁されていた場所や犯人について問うと激しく動揺する。

 この演技は難しい。「怖い」「つらい」「嫌だ」と言ってしまえば、比較的容易に表現できる。ところが、百合亜にはセリフがほとんどない。表情の変化、しぐさの変化で感情を表す必要がある。桜庭の演技力なくして成立しない役柄だ。

 プロデューサーの遠山圭介氏(東海テレビ)は「百合亜は美しくはかなげで、不思議な雰囲気をまとった女性。美しく演技力の確かな桜庭さんは、このヒロイン像にぴったり」と話す。

 桜庭は現在、27歳。2007年にスカウトされて芸能界入りし、08年の映画「天国のバス」が初出演作で、同年の日本テレビ系「栞と紙魚子の怪奇事件簿」でドラマデビュー。ヒロインを演じた10年の映画「最後の忠臣蔵」でブルーリボン賞新人賞、アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。最近では、昨年のNHK連続テレビ小説「スカーレット」でヒロインの妹役を好演した。

 桜庭は「主演のオファーを久しぶりに頂き、とてもうれしかった。この役は、私にとってもチャレンジングなので、1シーン1シーン、どこまでも深く、しっかり自分の中に入れてお芝居をしたい」と語っている。

 第1話のラストシーンが秀逸だ。ここでもセリフがない。長い黒髪が風に揺れている。白い肌に赤い唇。口がわずかに開いて白い歯がのぞいている。目が潤んでいる。その瞳が光を受けて輝いている。表情だけの演技だ。でも、強く訴えかけて来るものがある。強いて言葉で表すのならば、それは、純真さと妖しさ。

 このドラマの成否は、百合亜がどんな女性なのか、見ている人が知りたいと思うかどうかにかかっている。初回の最後に、桜庭は、的を射た。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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