「半沢直樹」小木曽役・緋田康人が明かす“机バンバン”秘話「タオル敷いて…」“敵役”オファー増に感謝

[ 2020年2月25日 11:00 ]

2013年「半沢直樹」の小木曽人事部次長役で強烈な存在感を放った緋田康人(上)は笹本玲奈(下右)と「TBSラジオ オリジナルドラマ『半沢直樹』敗れし者の物語 by AudioMovie」に出演(C)TBS
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 7年ぶりに復活を遂げるTBS日曜劇場「半沢直樹」(日曜後9・00)が4月にスタートするのを前に、主人公・半沢直樹に倍返しされた人々の“その後”を描くラジオドラマ「半沢直樹 敗れし者の物語」(TBSラジオ、火曜後4・10頃)に、机を激しく叩きながら半沢を追い詰めた小木曽人事部次長を“怪演”した俳優の緋田康人(56)が出演。25日に「元東京中央銀行東京本部 小木曽忠生人事部次長編」前編、3月3日に後編がオンエアされる。今月中旬、東京・赤坂のTBSで収録を行った緋田に「半沢直樹」を振り返ってもらった。

 「半沢直樹」は俳優の堺雅人(46)が2013年7月期に主演。東京中央銀行の銀行員・半沢(堺)が行内の数々の不正を暴く逆転劇を痛快に描き、視聴者の心をわしづかみにした。最終回の平均視聴率は平成ドラマ1位となる42・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークし、社会現象に。決めゼリフの「倍返し」は新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた。

 今回は、半沢の倍返しを食らった敗者にスポットを当てたオリジナルストーリー。テレビ東京「ゴッドタン」や昨年10月期のTBS日曜劇場「グランメゾン東京」のスピンオフ「グラグラメゾン東京~平古祥平の揺れる思い」などで知られる人気構成作家のオークラ氏(46)らが脚本を手掛ける。

 TBSラジオ「ACTION」(月~金曜後3・30)内で毎週火曜午後4時10分頃から放送される全4章(全8話、各話約10分)。今月11日にスタートし、第1章(第1話、第2話)には東京中央銀行大阪西支店元支店長・浅野匡役の石丸幹二(54)と妻・利恵役の中島ひろ子(49)が登場した。ラジオやradikoに加え、今回は没入感あふれる音声コンテンツ「AudioMovie」でもストリーミング配信を行う。TBSラジオは「オリジナルオーディオドラマ」と銘打っている。

 緋田が演じた小木曽忠生は東京中央銀行の人事部次長。秋葉原東口支店長時代、融資課長代理だった半沢の同期・近藤直弼(滝藤賢一)に融資ノルマ達成のために圧力をかけ、その心労からの休職に追い込んだ張本人。パワハラの矛先は半沢にも向けられた。浅野匡大阪西支店長(石丸)と対立し、反抗的な態度を取る半沢を陥れるため、ついには意図的に裁量臨店を仕組んだ。しかし、機転の利いた半沢の対抗策の前に、故意の罠(わな)を次々と見破られ、敗北。その後、左遷扱いで出向となった。

 半沢の前に立ちはだかった数々の敵の中でも、小木曽の陰湿さを体現した緋田の演技は大反響。机を激しく叩きながら半沢を追い詰める強烈な緋田の芝居により、視聴者は理不尽に耐える半沢に感情移入。その後の逆転劇の痛快さ増幅する重要なエッセンスとなった。「半沢直樹」が「ギャラクシー賞」13年9月度月間賞に輝いた際に「堺雅人の好演に加えて小木曽役の緋田康人、近藤役の滝藤賢一など脇役の熱演ぶりも光った」と講評されたほどだった。小木曽は東京中央銀行の子会社に出向し、どのような人生を過ごしていたか――。ミュージカル女優の笹本玲奈(34)が小木曽の出向先の部下・竹内遥を演じる

 収録を終えた直後、緋田は「7年前のテンションを持ってこれるのか、ちょっと心配な部分もありましたが、参加できて、うれしいです」と喜び。意外にもラジオドラマは初挑戦だったが「あまり考えすぎても変になるのもアレなので、素直にやるしかないと思いました。マイクとの距離など、コツをつかむのが難しかったですが、とても新鮮。楽しい刺激になりました」。収録を聞いて、7年たっても“小木曽の小心者ぶりは健在”と伝えると「(小木曽らしさが)出ていました?それはよかったです」と安どした。

 当時、ドラマが社会現象になる予感は「全くなかったです」といい「最初に倍返しされる役だったので、ちょっと緊張はありましたが、机を叩くのをはじめ、全部、監督の演出通り。そもそも『銀行員に見える?』とスタッフに聞いていたぐらい。今回のラジオドラマと一緒で『(自分の演技で)大丈夫でした?』というのが毎回ですかね(笑)」と謙遜した。

 「半沢直樹」をはじめ、「ルーズヴェルト・ゲーム」「下町ロケット」「陸王」「ノーサイド・ゲーム」などの福澤克雄監督(56)は一連のシーンを繰り返し、異なる角度から何度も通して撮るのが特徴。ある種、舞台中継のような生の臨場感をカメラに収める。そして、テイクを重ねるうちに芝居が極まる。演者の顔にカメラを近づける福澤監督十八番の「顔芸」も、ここから生まれる。

 「(テイクを重ねる間も)ずっと机を叩いていて。あんなにいっぱい叩いたので、本当に痛くなった思い出はあります。しまいには、ちゃんとタオルを敷いてくれましたね」と笑って“秘話”を披露。「何テイクも撮って、少しずつ撮影が進んでいって、終わった時の『やったー!』という充実感。現場の“熱さ”は、いまだに残っています」と振り返った。

 SNSはしないため、大反響の実感は当時も今もなく「どちらかというと引きこもりなので(笑)街にも出ないんです。だから『半沢の…』と声を掛けられることも、あまりありません」としたものの「仕事的には、敵役といいますか、オファーはものすごく増えたので、ありがたかったですね」と感謝。数々の作品を彩ってきた名バイプレーヤーだが「やっぱり特別なドラマにはなったんでしょうね。(半沢直樹のポスターなど)こういうのを見ると、やっぱり襟を正しますよね」と「半沢直樹」の位置付けを語った。

 今回は、小木曽の知られざる“背景”も描かれるとあり「今までにない小木曽を皆さんに聴いていただけるということで、放送が今から楽しみです」とアピール。“机バンバン”もあるのか、注目される。

 演劇ユニット「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」在団中の1986年、住田隆(54)とお笑いコンビ「ビシバシステム」を結成。不条理コントで人気を集めた。94年、ビシバシステムを脱退し、俳優に専念した。

 もともと興味はあった世界だが「これという衝撃的なきっかけはないんです。何でしょうね、怠け者だったからじゃないですか?」と笑った。

 「お笑いをやった時は、お客さんに笑っていただくために一生懸命考えていましたが、役者をやるにあたっては『次はああいう役、こういう役』というのは特にないんですよね。好きな俳優もたくさんいますが、自分が目指すのとは違って。それがあったら、分かりやすいんですが、だから、困っちゃうんです。昔、大好きな“おヒョイさん(藤村俊二)”がテレビでおっしゃっていたんですが、『主演は大変なんだよ。朝早くから夜遅くまで現場にいなきゃいけないでしょ?』と。『そうですよね~』、おっしゃる通りだと思いました。主演はいいです(笑)」

 「半沢直樹」終了2カ月後、13年11月のインタビューで「これまで通り、これからもマイペースでやっていきたい」と語っていたが「それは変わらないですね」と最後まで自然体だった。

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