「西郷どん」で存在感 大村崑 86歳「元気ハツラツ」の秘けつは半世紀以上の“婦唱夫随”

[ 2018年4月29日 12:03 ]

「今でもお客さんの来訪時はこれをお出しすると喜んでもらえるんですよ」と初代CMキャラクターを務めた「オロナミンC」を手にニッコリの大村崑
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 関西に住む喜劇俳優の大御所は?と聞かれたら、真っ先に思い浮かべるのが大村崑だ。御年86歳の大ベテランだが、放送中のNHK「西郷(せご)どん」で大河ドラマデビューを果たすなど元気いっぱい。出演の経緯や、この年になっても現役バリバリの秘けつを伺おうと思ったら「よければ来ませんか?」と誘っていただいたので、大阪府内の自宅におじゃました。 (窪田 信)

 1965年に発売され、すぐに大ヒット商品となった「オロナミンC」。その初代CMキャラクターを務めた時のずれ落ちた眼鏡姿ポスターは、昭和の頃は街中のどこにでも貼られていた。テレビCMもバンバン流され、大村の名前と顔を知らない人はいなかった。

 そんな大スターの、涙もろくて物静かで温厚で凜(りん)としながらも、どこかとぼけた感じの老侍姿。「西郷どん」に、主演・鈴木亮平(35)演じる西郷吉之助(隆盛)の祖父・龍右衛門役で起用されているのを画面で見るまで知らなかったことを素直にわびると「あはは。この年になって初めてだからね」。笑って許していただいた上に裏話を、来客用に用意を欠かさないというオロナミンCを片手に話してくれた。

 NHKから連絡が入ったのは昨年5月。「“ドッキリ”に違いない」。年齢的なこともあって冗談だろうと疑っていたが、約束の日に同局へ赴くとスタッフ約50人が待機しており、「あなたしかいない」と口説かれて本当の話だとようやく認識。「やります!」と即答し、武者震いした。

 武士役のため正座から立ったり座ったりできるかという“採用試験”もあったが難なくクリア。2カ月間の撮影終了後は「途中で倒れたらどうしようと思っていたので、ホッとして泣けた」という。

 では“何歳ぐらいまで現役?”にも気概を見せた。10年には、当時まだ現役だった振分親方(41=元小結・高見盛)、歌手・八代亜紀(67)らを招いた金婚式パーティーで「102歳まで生きる」と宣言したが「今も当然、そのつもり」。「てるてる家族」(03年後期)以来、出演機会のない連続テレビ小説についても「お呼びがかからんかな」と意欲たっぷりだ。

 19歳の時、肺結核のために右肺を切除。医者から「40歳までしか生きられないよ、と言われた」が芸能界入りし、テレビの「頓馬天狗」でブレーク。後に結成した劇団仲間の故芦屋雁之助さん、小雁(84)兄弟と3組合同で、日本初の生中継結婚式も行った。

 その相手が、3月に結婚生活59年目に入ったカンツォーネ歌手の妻・岡村瑤子(ようこ)さん(81)。当時はOLで、歌手を夢見てテレビのオーディションに来ていた時に出会い、一目ぼれで即日プロポーズした。

 「違う人と結婚していたら、こんなに長生きしてなかったね」。当初は仕事に集中するあまり、家庭を顧みず、愛想をつかした瑤子さんが約10年後に米国まで家出したこともあった。「それがきっかけ」で愛妻家に変身し、手伝うようになった家事は今も続けている。

 大河だけでなく、コミカルな葬儀社の専務を演じる関西系「赤い霊柩車」シリーズでは、92年の開始からずっと出演。舞台に加え講演活動を年に数十回こなし、全国を飛び回るが「最近、太り気味なのが悩み」だとか。

 理由は?に「服が最近、きつくなって。コーディネートも全部、奧さん任せなんで…」と愛妻を横目に苦笑い。瑤子さんは歌の勉強などで毎年6〜7月にイタリアに行くが「1カ月は我慢できるが、早く帰ってきてほしい」とも漏らした。

 取材中、瑤子さんが時折、補足を入れるたびに「うん、うん」とうなずきずっとニコニコ。なるほど。オロナミンCの決めぜりふにもなった「元気ハツラツ」の源は、半世紀以上にわたって熟成された“婦唱夫随”にあったようだ。

 ≪大の好角家 年に十数回生観戦≫15年に亡くなった故北の湖理事長(元横綱、享年62)をはじめ、数多くの角界関係者と親交がある好角家としても知られる。現在も年6回の本場所すべてに出向き、合わせて毎年十数回は生観戦するという。立ち上がって手を振り、大喜びする姿がテレビの映像で流れることも多い。「全国の人への、ボクの生存確認にもなるしね」とその理由を明かして笑わせた。

 ◆大村 崑(おおむら・こん)本名・岡村睦治(おかむら・むつじ)。1931年(昭6)11月1日生まれ、神戸市長田区出身。神戸市立第一機械工業学校(現市立科学技術高)卒。57年に大阪北野劇場の専属コメディアンに。その後はドラマ、舞台、コメンテーターなどで幅広く活躍。日本喜劇人協会の8代目会長(現相談役)。2017年に旭日小綬章を受章。

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