観客を笑わせられるか…高畑淳子“贖罪”舞台の試練

[ 2016年9月7日 10:25 ]

高畑淳子

 俳優の高畑裕太容疑者(22)が強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕されてから2週間が経過した。母親で女優の高畑淳子(61)は8月26日に行った謝罪会見で、1カ月後に初日が迫っていた主演舞台「雪まろげ」について舞台をお見せするのが私の贖罪(しょくざい)だと思っている」と涙ながらに語った。舞台を製作する東宝には淳子から「私がやっていいものかどうか」と“おうかがい”の連絡が入った。本人が罪を犯したわけではなく、裕太容疑者も成人ということで、東宝はGOサインを出した。

 「雪まろげ」は、故森光子さんが「放浪記」「おもろい女」とともに代表作にしていた舞台。約30年にわたり、471回上演された人気作だ。とある温泉街を舞台に、芸者の夢子がちょっとしたことからついたウソが、どんどんと雪だるまのように大きくなり、やがて大事件を起こしてしまう人情喜劇。森さん亡き後、「放浪記」は仲間由紀恵の主演で復活。さて「雪まろげ」は…という時、2008年に「放浪記」で主人公・林芙美子のライバル・日夏京子を演じ、森さんからの信頼も厚かった淳子に白羽の矢がった。

 日夏京子は性格がきつい女性。林芙美子に詰め寄る場面もあるが、当時、淳子は大先輩の森さんにもひるむことなく、演じきった。カラッとした、気風のいい女優さんだ、と思ったのを覚えている。

 森さんは舞台開演前、自分の楽屋で共演者と雑談を交わす“お茶会”を日課としていた。座長として、共演者のその日の様子を確認し、緊張をほぐすという意味もあったが、何より「和」を大事にしてのことだった。淳子にとって今回の「雪まろげ」は、出身母体の劇団青年座の公演をのぞけば、初の座長公演。森さんの代表作を引き継ぐだけでも大仕事のはずだが、そこに裕太容疑者の事件が加わった。「降板するべきでは」の声もあるが、舞台は今年いっぱい、全国各地を巡業。1カ月の公演なら、まだ代役を探せなくもないかもしれないが、さすがに3カ月以上の長期となると、スケジュールを押さえられ、作品の大黒柱となりうる女優はいない。

 作品は喜劇で、観客を笑わせなければいけない。謝罪会見や、その後の稽古場などでの様子からすると、淳子はまだ喜劇を演じられる精神状態ではないように思える。観客は舞台に登場する淳子の後ろに、裕太容疑者の影を見るだろう。淳子には、裕太容疑者の不祥事を忘れさせるほど観客を笑わせ、楽しませる演技を期待したい。天国の森さんも、そう願っているはずだ。

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2016年9月7日のニュース