中村屋スピリットで挑戦「ここから先は、僕たちの仕事にしないと」

[ 2014年5月1日 11:30 ]

ニューヨーク公演へ向け気合十分の中村勘九郎(左)と七之助の兄弟

勘九郎、七之助兄弟 7月にNY公演

 十八代目が精魂込めて築いてきた「平成中村座」。絵師重信の薄幸な妻、お関を演じる七之助のNY公演にかける思いも人一倍熱い。

 「こんなに早く行かせていただけるとは夢にも思ってませんでした。父が残してくれたものをしっかりと受け継いで、今回で終わりなんてことにならないように全身全霊で演じたい。ここから先は、僕たちの仕事にしないといけませんね」

 中村座の大きな幟(のぼり)が摩天楼の街に誇らしく揺れたのは、04年7月のこと。勘三郎(当時勘九郎)さんの「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」は、地元ファンに驚がくを持って迎えられた。団七九郎兵衛が繰り広げる「泥場」と言われる殺しの場面、ニューヨーク市警まで登場する圧巻のクライマックス。ちょうど上映中の大ヒット映画を引き合いに、現地メディアの辛口劇評家が「“スパイダーマン2”を超えるスリル」と絶賛。勘三郎さんは「これだよ。オレはこれを待っていたんだ」と大いに喜んだ。

 同じ舞台に立っていた七之助は「父は“歌舞伎が演劇として認められたんだ”と心から喜んでいました。それまでの歌舞伎の海外公演の批評と言えば、女形が美しいとか、衣装が豪華だとかばかりでしたからね。初めて芝居として評価されたのがよほどうれしかったんでしょう」と、あの時の子供のようにはしゃいでいた姿は生涯忘れないという。

 歌舞伎は家の芸。十八代目が生き生きと演じ、ファンの目に焼き付けた数々の当たり役は、今、2人の息子たちに着実に受け継がれつつある。そして、もう一つ。困難にひるむことなくチャレンジする「中村屋スピリット」もだ。

 ◇「平成中村座NY公演」 7月7日から12日まで8公演。ニューヨークのリンカーンセンター・フェスティバルの目玉公演として「ローズ・シアター」で上演。勘九郎、七之助に加え、極悪非道な浪人・磯貝浪江を中村獅童が演じる。中村座NY公演は、「夏祭浪花鑑」(04年7月)、「法界坊」(07年7月)に次ぐ3度目。

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2014年5月1日のニュース