[ 2010年1月25日 06:00 ]

 オペラの楽しみ方は千差万別。観る人の視点や作品の特性によって、いくつもの鑑賞ポイントが生まれ得るからです。新国立劇場で行われたプッチーニの歌劇「トスカ」の再演は、まだオペラ鑑賞歴の浅い私に、新たなるオペラの楽しみ方を教えてくれました。私は、いつの間にか劇中で起こった殺人事件の“共犯者”となり、部屋の片隅で、歌姫トスカ(イアーノ・タマー)がスカルピア(ジョン・ルンドグレン)を刺し殺す瞬間を、固唾(かたず)をのんで見守っていたのです。

 なぜ、トスカへの単なる“感情移入”ではなく“共犯者”になったと感じたのか? 
それには、2つの要因が挙げられます。1つは警視総監スカルピアが支配欲にまみれたサディスティックな男性であったこと。殺されて然るべし。「トスカ、早く刺しておしまいなさい!」と思わずにいられないような人物にキッチリ描かれていました。
もう1つは、プッチーニによる二重構造のような音楽作りと、それを後押しする新国立劇場のハイテク舞台装置による鮮やかな場面転換にあったのです。

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