大野豊氏 「持っている」湯浅が球場全体の雰囲気を変えた

[ 2023年11月2日 23:20 ]

SMBC日本シリーズ2023第5戦   阪神6ー2オリックス ( 2023年11月2日    甲子園 )

<神・オ>5番手で登板した湯浅(撮影・大森 寛明)
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 【大野豊 視点】短期決戦、しかも日本一を決める大一番では「持っている」選手の存在が勝敗を左右する。劇的な阪神の逆転勝利。流れを変えたのは5番手・湯浅の投球だった。

 チームとしての特徴が似ている中での対決。点の取り合いの中でリリーフの出来で勝敗が分かれる流れになっている。湯浅の投球は見事だった。紅林、若月の連続空振り三振を含み、13球で阪神に動きをもたらした。7回には西純、島本、石井の継投の中でダブルエラーも飛び出し、追加点を奪われた。嫌なムードを150キロ超の直球で断ち切った。

 初回以来の3者凡退で8回を抑え、走者を出して苦しい守りを強いられてきた展開も変えた。直球が走り、気持ちも入っていた。その投球がつなぐ攻撃のスイッチを入れた。甲子園の雰囲気を湯浅が一変させると、阪神は強気に攻めるだけだった。

 湯浅が仮に何事もなくシーズンを戦っていたら、甲子園のスタンドの驚くような盛り上がりはなかったと思う。選手もファンも戦力になれなかった彼の悔しさが分かっている。再起に向けた努力も知っている。シリーズの戦力にも位置づけられていなかった湯浅に大事な場面を任せた岡田監督の決断とともに、第4戦でサヨナラ勝ち、そして第5戦の逆転王手を実現させた投球は記憶に残ることになった。

 一方のオリックスは試合の主導権を最後に手放した。先発・田嶋は7回4安打無失点。まだ83球だったが、仕事はここまでだった。7回の攻撃でも代打は送らず、引っ張るだけ引っ張った上での、中嶋監督の継投だった。8回に山崎颯でリードを守る流れにできなかったことがオリックスの誤算だ。

 負けられない第6戦はエース山本に託すのか。第5戦でのベンチ入りは普通なら考えられない。なぜ入れたのか。第6戦での答え合わせに注目する。

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