ソフトB・甲斐 WBCへ“兄貴タッグ”打撃投手の兄から快音 エールももらった「東京五輪ぐらい打って」

[ 2023年1月23日 05:00 ]

打撃を始める前にストレッチを行う甲斐(撮影・中村 達也)
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 兄貴の40球打ちで甲斐は打撃復調への思いを強くした。ソフトバンク・甲斐拓也捕手(30)が22日、地元大分市内で行っている自主トレを公開した。フリー打撃では元甲子園投手の兄・大樹さん(33)が打撃投手を務め、弟は人生で初めて兄の球を打った。オフのテーマ「初心」を実行するとともにワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での世界一、20年以来のリーグ制覇への思いを強くした。

 小雨が降り出した午後のフリー打撃だった。世界と戦う甲斐に対し“兄キャノン”が発動された。3歳上の長男・大樹さんが打撃投手で登板。人生初の“兄弟対決”だった。

 「やはり1打席ごとが大事となってくる。自主トレのテーマが初心に返って、もう一段階、上げること。自分が変わらないといけないと思って(兄に)投げてもらいました」

 計40スイングし、最後の1球を左翼席に放り込んだ。大樹さんは、甲斐と同じ大分・楊志館でエースだった。07年夏はノーシードから大分大会を勝ち上がり、甲子園で8強入り。甲斐の目標、憧れだった。「兄を見て野球を始めて追ってきた。小、中、高、ずっと同じで届かなかった存在だったが、今日初めて打った。もう超えているでしょう」。まずは過去の殻を破った。

 兄は涼しい顔のまま、弟に厳しめのハッパをかけた。「他の選手なら当てちゃだめですけど拓也なら大丈夫ですので。WBCでは東京五輪ぐらいの打撃に戻って打ってほしい。今シーズンは打率・250くらいお願いします」。21年夏の東京五輪で甲斐は全5試合に出場し、打率・357、2打点で金メダル獲得に貢献。昨季は打率・180、1本塁打と極度の不振だった弟へ、兄は復調への願いを込めて投げ込んだ。

 オリックスの森が招集を辞退し、WBCでは正捕手としてかかる負担は大きくなった。フリー打撃は以前よりもテイクバックを深く、肩の押し込みで打球をセンター方向へと打ち返した。守備ではWBC使用球でのキャッチボールや手首に重りを巻いて、素手で捕球する練習などに取り組んだ。これはフレーミングと呼ばれ、際どいコースの球をストライクに見せる技術だ。

 3月にはダルビッシュや大谷といったメジャーの超一流の球を受ける。「いい投球をしてもらえるように、堂々としたキャッチャーになる」と甲斐。兄との原点回帰の時間を終えた顔はすがすがしく、視線は世界一の戦いへ向けられていた。(井上 満夫)

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2023年1月23日のニュース