中日・大野雄 30人目で球団史上初の完全試合消えるも、10回志願の続投に「自分を褒めてあげたい」 

[ 2022年5月7日 05:30 ]

セ・リーグ   中日1-0阪神 ( 2022年5月6日    バンテリンD )

<中・神>延長10回1死満塁、石川昂(手前)のサヨナラ適時打に歓喜する大野雄(撮影・成瀬 徹)
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 延長10回の決着。中日・大野雄は両手に水を持ってベンチを飛び出し、サヨナラ打の石川昂の元へ走った。

 「10回で降板すると決まっていた。記録なんてどうでもいい。最後に昂弥が打ってくれて、全てが報われたというか、ほんまに勝って良かった」

 10回2死、初回から数えて30人目の打者だった佐藤輝に115球目の直球を二塁打された。球団史上初の完全試合は消えても、1試合で打者29人連続アウトを奪うのはプロ野球史上初めて。快挙が途切れた直後のマウンドでは立浪監督から「2人で1つのアウトを取るつもりでいけ」と励まされた。続く大山は力強い直球で二飛。120球を投げきった。

 9回を108球で終え、一度はR・マルティネスとの交代が決まっていた。「悩んでいたときに柳の顔が浮かんで、あいつなら絶対いくと。それで、監督に“やっぱり、いかせてください”と言った」。志願して最後までマウンドを守った。

 フォーム改良も奏功した。4月19日のヤクルト戦で4回6失点の炎上。直球の力強さを戻すために、セットポジションでやや開き気味に構え、左の軸足に体重を乗せることを意識した。黒星が付いた前回28日の阪神戦は8回3失点完投で復調。今回も体重を乗せた直球とツーシームの切れ味が抜群だった。19年9月14日に同じ本拠地、同じ阪神戦でノーヒットノーランを達成した経験も生きた。

 「青柳投手が凄いピッチングをしていて、1点勝負やな、と。パーフェクトは継続中だったけど、勝つためには、甘い球で長打を打たれるぐらいなら、四球OKだと思っていた」

 延長戦で完全試合を逃すのは西武・西口文也以来、2人目。運命か、誕生日は同じ9月26日だ。延長戦達成なら史上初だったことを知らされ、一瞬悔しがった後に笑った。

 「記録には残らない。でも、あそこで10回もいける投手はなかなかいない。そこは自負したいし、自分を褒めてあげたい」

 35日ぶりの2勝目。完封は2年ぶり通算15度目で、「10回完封」はもちろん初めてだ。2連敗で止め、貯金1も取り戻した。エースは記録ではなく、チームの勝利のためにこれからも腕を振り続ける。(中澤 智晴)

 【データ】大野雄(中)は9回を完全に抑えたが、10回2死から初安打を許し快挙を逃した。延長戦でノーヒットノーランをフイにしたのは14年の金子(オ)以来12人目。うち、完全試合を逃したのは05年8月27日楽天戦の西口文也(西)以来17年ぶり2人目だ。西口は延長10回、28人目に初安打。大野雄の初回先頭打者から29人連続アウトは、今季の佐々木朗(ロ)を含む史上16人の完全試合達成者と、西口の27人を抜くゲーム最長記録になった。なお、延長戦でノーヒットノーラン達成は73年8月30日中日戦の江夏豊(神=11回)だけ。また、大野雄は19年9月14日の阪神戦でノーヒットノーラン。1人でノーヒットノーランと完全試合を達成していたら藤本英雄(巨)、金田正一(国鉄)、外木場義郎(広)に次ぐ偉業だった。また、同一年に2人が完全試合なら66年佐々木吉郎(大洋)、田中勉(西鉄)以来2度目となっていた。

 ▽西武・西口文也の「完全試合未遂」 05年8月27日の楽天戦で先発の西口が9回まで9奪三振の完全投球も楽天先発の一場も9回5安打無失点と奮闘し、試合は0―0のまま延長戦へ。西口は10回、先頭で28人目の打者・沖原に右前打を許し大記録はならずも、その裏に石井義のサヨナラ打で1―0で勝利。過去に2度「あと1人」でノーヒットノーランを逃していた右腕は1安打完封勝利に「僕には(完全試合と)縁がないということで」とコメントした。

 ▼西武・西口2軍監督 僕と一緒ですね。自分のときも0―0で延長に突入しましたが、記録よりも点を与えないことに集中していました。とにかく勝ちたかったので、10回表に1本打たれた後の方がギアが入ったと記憶しています。大野投手も同じ気持ちだったんじゃないですかね。

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2022年5月7日のニュース