【藤川球児物語(22)】微妙判定連発に退場処分…中日との激闘制しV前進

[ 2020年12月4日 10:00 ]

05年9月7日、中日戦で就任後初めて、マウンドに向かい久保田(右)にゲキを飛ばした岡田監督(左)

 05年、ペナントレースを制するためには中日を超えなければならなかった。互いに意識をしていた。岡田彰布、落合博満。両軍の監督も、藤川球児ら選手たちも「勝つしかない」と思っていた。

 緊迫した戦いになっていた。9月1日の甲子園の対戦では8回、桧山進次郎が頭部死球を受けた。危険球退場後も岡田は強く抗議した。「狙ってないなら、いいんかという問題や。いろんな状況を考えたら、あそこに行くわけがない」。意地と意地のぶつかりあい。舞台は9月7日のナゴヤドームに移った。

 勝てば3ゲーム差となるが、負ければ1差の天王山。藤川は1点リードの6回から登板し2死二塁でタイロン・ウッズを空振り三振に仕留めたが、7回2死一塁から谷繁元信に同点二塁打を許した。だが、阪神は8回に鳥谷敬、9回も関本賢太郎の適時打が飛び出した。関本の適時打のときに二塁走者・中村豊も本塁突入したが、微妙なタイミングの判定はアウト。これが抗議の第1ラウンド。問題は久保田智之を投入した9回裏だった。

 無死二、三塁から谷繁の二塁へのゴロを処理した関本が本塁送球。この判定がセーフとなり、阪神ベンチは沸騰した。猛抗議の中、ヘッドコーチの平田勝男が暴力行為で退場。試合は18分中断した。藤川もベンチから大声を張り上げた。

 同点に追いつかれ、なおも1死満塁。岡田はマウンドに向かった。「打たれろ。負けてもおまえの責任ちゃう。責任はおれが取る。むちゃくちゃやったれ」。開き直った久保田は連続三振でピンチを脱出。試合は延長11回、中村豊の決勝アーチで決まった。落合は「監督で負けた。以上」とだけコメントを残した。

 「審判も必死なのは分かる。でも、みんな勝ちたい気持ちなんです」と藤川も興奮した一戦。激闘を制した阪神に1週間後の14日、マジックが点灯。勝利のためにチームが一つになる。そのために何でもやれる。やらなければならない。この思いをずっと藤川は持ち続けた。 =敬称略=

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2020年12月4日のニュース