球児 現役引退 右腕限界「チームに迷惑かけている 来季はさらに苦しくなる」

[ 2020年9月1日 05:30 ]

現役を引退する阪神・藤川

 火の玉ストッパーがタテジマを脱ぐ――。阪神は31日、藤川球児投手(40)が今季限りで現役引退すると発表した。右腕を含めたコンディション維持がシーズンを通して困難として本人から申し出があり、球団も了承した。浮き上がるような強烈な真っすぐを武器に2005年は「JFKトリオ」の一人としてリーグ優勝に貢献。長きにわたって絶対的守護神として君臨し2007年にはセ・リーグ記録の46セーブを記録した。現在は1軍復帰を目指し鳴尾浜球場で調整中。プロ生活22年の集大成として、あと5に迫った日米通算250セーブ達成など有終の美を飾る決意でおり、きょう1日に兵庫県西宮市内で会見する。

 あまりに突然だった。この日の午後に開かれたオンラインでの緊急会見。谷本修球団本部長の口から、虎党のみならず日本中の野球ファンに衝撃を与える事実が発表された。

 「藤川球児投手から今シーズン限りでの現役引退の申し出を受け、球団としては了承いたしました」

 メジャー挑戦や独立リーグ参戦で抜けた年はあったとしても、猛虎の守護神といえば球児だった。代名詞の火の玉ストレートの威力もさることながら、マウンド上での存在感は圧倒的。一方で、ケガや挫折を何度も乗り越えてきた不屈の右腕でもあった。抑えに本格復帰して臨んだ今季はまだ半ば。それでも、異例の時期に断を下すほど、不惑を迎えた体は限界だった。

 8月中旬に電話で申し出を受け、了承した谷本本部長が決断理由を代弁した。

 「本人から聞いた話ですけど、一年間通じてコンディションを保つのが年々難しくなってきて、体が悲鳴を上げているんだというのが一つ。もう一つはやはりチームに非常に迷惑をかけている。来季は今季以上に苦しくなるという懸念も考えられると」

 実は、昨春も藤川から現役引退の申し出があり、その時は保留。その後の活躍に、球宴前に球団側から「強く現役続行を要請した」ことを明かした。ただ、今季は開幕から一向に調子が上がらず、7月12日に出場選手登録を抹消。同23日に抑えではなく中継ぎとして昇格したが、8月12日に再び登録を外れた。理由は「右肩、右上肢のコンディション不良」。同部長によると「手術が必要なレベル」と診断されているという。今季11度の登板で3人で抑えた試合はなく、1勝3敗1ホールド2セーブ、防御率7・20。本来の球威が出ず、制球に苦しむ痛々しい姿もたびたび見られた。

 ただ、現在も鳴尾浜球場で調整を続け9月中の1軍復帰を目指し必死でもがいている。あと5に迫る日米通算250セーブの偉業も、自分ではなく周りの人たちのために諦めるつもりはないはずだ。

 大功労者だけに引退後の動向も注目されるが、谷本本部長は「今後についてはおいおい話していきたい。ただ藤川君の本意は、来年のことを話すのではなく、今季にかける思いというのをみなさんにお伝えしたいということだろうと思っています」と現状での白紙を強調した。

 藤川は、きょう1日に会見に臨み、自ら胸中を明かす予定。球史に残る大守護神がどんな言葉を発するのか。そして、残り試合でどんな姿を見せてくれるのか。耳に、目に焼き付けたい。(山添 晴治)

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