中畑氏 巨人よ!今こそ生え抜き育成のチャンス

[ 2019年11月26日 09:00 ]

<巨人>1979年の「地獄の伊東キャンプ」で大の字になり倒れこむ中畑清内野手
Photo By スポニチ

 【キヨシスタイル】巨人にとってこんなオフは初めてなんじゃないかな。FA戦線で獲得に乗り出した鈴木大地、美馬学を2人とも獲り逃がした。手を挙げれば球団ブランドと資金力でFA選手が来てくれる時代じゃなくなったんだね。

 そればかりか、これまで認めてなかったポスティングシステムで今季15勝の山口俊が出ていく。だから余計に美馬が欲しかったんだろうけどね。

 でも、ものは考えようだ。FA補強に頼れないなら、腰を据えて選手を育てるしかない。ソフトバンクや広島、西武のような育成環境を整え、ドラフトで獲った自前の選手を育てていく。そのきっかけにする大きなチャンスだ。

 5位に沈んだ1979年のオフに行われた「地獄の伊東キャンプ」を思い出す。栄光のV9時代が73年で終わり、新旧交代期。長嶋茂雄監督に指名された若手18選手が朝から晩まで汗を流した。

 投手陣は江川卓、西本聖にこのキャンプからサイドスローにした角三男(のちに盈男)、野手は篠塚利夫(のちに和典)、スイッチ転向で泣きながらバットを振ってた松本匡史に私…。

 生まれ変わったチームは翌80年3位に浮上し、81年は藤田元司新監督の下でリーグ優勝、そして日本一。80年代は4度の優勝に2位と3位が3度ずつ。伊東キャンプを経験した選手が中心になって、ずっとAクラスを確保した。

 チームの在り方が変わってきたのは93年オフにFA制度が導入されてからだ。FAで12球団断トツの26選手を獲得。落合博満、工藤公康、江藤智、小笠原道大、杉内俊哉、村田修一、丸佳浩みたいに移籍1年目にV奪回の大きな原動力になった選手もたくさんいる。

 でも、そのFA選手が若手の成長の芽を摘んでいた部分もある。レギュラーポジションを独占すれば、若手が入り込める隙がなくなる。2軍で結果を残して1軍に上がっても、チャンスがもらえない。それじゃあ伸びるはずの素材も伸びないよ。

 FA補強に失敗した今こそ原点回帰。菅野智之、坂本勇人、岡本和真に続く生え抜きのスーパースターを育ててほしい。ファンもきっとそれを望んでいる。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

続きを表示

2019年11月26日のニュース