復活への一歩を踏み出した、永川が燃やす情念の炎

[ 2018年6月10日 12:31 ]

7日の日本ハム戦の8回から3番手で登板し、2回2安打2奪三振無失点の投球を見せた永川
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 小雨に煙る6日のマツダスタジアム。日本ハム戦に備えた投手練習の輪の中で、永川と中崎が入念にダッシュを繰り返していた。言わずと知れた、広島の新旧守護神。合間には会話を交わす姿もあった。その内幕を“前任者”が明かした。

 「印象に残る試合があり、ザキ(中崎)に聞いてみたいことがあったんです。ベストピッチなのか、どういう気持ちで投げたのか」

 4月14日の巨人戦。坂本、吉川尚、ゲレーロを11球で打ち取り、3―2の9回を締めた中崎の精密な投球がハートに響いた。「答えはベストピッチでした。“そうじゃない”と言われたら、どうしようと思った」。そう言って永川は笑った。

 翌7日、右腕は1軍のマウンドに立った。4―8の8回に登板すると、中田をカットボール、レアードをフォークで空振り三振に斬るなど、イニングをまたいで2回を零封。直球は最速147キロを計測し、制球にも以前にない安定感があった。

 「近年が悪すぎたけど、状態は一番いい。技術的な底辺が上がっていると思います」

 通算165セーブを誇る右腕だが、1軍登板は16年5月25日の巨人戦以来。左膝痛で走り込めず、引退危機に直面していた。走れるようになれば、もっといい投球ができる―。情念は消えず、球団の後押しもあって昨年9月末に手術。リハビリに励み、2年ぶりに表舞台に戻って来た。

 「1ミリでも成長がないなら、野球をやる意味がない。ただ、若手よりもいいボールを投げ、少しでも勝負できると思えるうちは、野球をやっていたい」

 残り少ない松坂世代で、広島投手最年長の37歳。一途に汗を流すベテランは、若いブルペン陣には格好の手本であり、アドバイザーだ。中崎は言う。「ボクの試合をよく観てもらっている。同じ目線でのフォームや投球の助言はありがたい」

 16年目に踏み出した一歩。永川の立場はまだ強固と言えず、3連覇を目指す組織の中では、結果はもちろん、チーム事情によっても降格の可能性がある。それでも必死に前進する。1軍復帰が最終目標ではなく、その先を見ているからだ。

 「投げ続ける以上、セーブを挙げる役割を担いたい。戻りたい。その気持ちが無くなったら終わり。ただ、今のザキはレベルが高いので、ハードルも相当に高いですけどね」

 心技体をもっと磨けば、中崎のベストピッチに追い付ける―。柔和な表情で語った言葉に、ベテランが燃やす情念の炎が透けて見えた。

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2018年6月10日のニュース