“戦国東都”日大を引っ張る新主将 学生コーチとして目指す日本一

[ 2016年9月4日 09:20 ]

ノックバットを手に意気込む日大・小保根主将

 夏の甲子園が閉幕してから早10日余り。再び大学野球のシーズンがやってきた。東都大学野球秋季リーグ戦はあす5日に開幕する。今秋ドラフトの野手の目玉、京田陽太内野手(4年)を擁する日大の練習を取材に行くと、ひときわ大声でナインに声かけする男がいた。

 小保根(こぼね)誠主将(4年)。役職は学生コーチだ。守備練習ではノックを打ち、練習をサポート。選手の一挙手一投足に目を光らせ、ミーティングではチームのために気付いた点を指摘する。「元々、自分のことよりも周りに目がいっちゃうタイプなんです」と言って笑うが、選手としての実績は輝かしい。

 履正社では山田(ヤクルト)の2学年後輩で3度の甲子園出場を果たし、2年春は4強入り。3年時は主将で4番を務めた。

 日大でも元々は内野手の選手だった。転機は3年秋のリーグ戦終了後。仲村恒一監督に「学生コーチをやってくれないか?」と頼まれた。それは選手としての引退を意味する。「今まであったものが全てなくなった」。頭の中を整理できないまま大阪の実家に電話をかけた。もっと選手として活躍する姿を見せたい。そんな思いを抱えていたが、母・弥世衣さんの言葉は意外なものだった。

 「高校時代から甲子園とか色々経験して良いもん見せてもろた。どんな道にいっても応援するから。120満点や」

 母の言葉に涙が止まらなかった。そして腹を決めた。学生コーチとして日本一を目指す、と。今春リーグ戦は4位。練習中から「全力疾走」するという原点回帰をみんなに呼びかけた。「全員が“考動”できるようになってほしい。自分で考えて行動する。全然まだまだです。満足しちゃダメなので」。そう話す表情は生き生きとしている。

 仲村監督は明かす。「小保根は下級生にも同級生にもはっきりモノが言える。こっち(コーチ)の方がより彼を生かせるんじゃないかと思ったんです」。小保根も「今はコーチになって良かったと思います。親のおかげですね。この親元に生まれてきて良かった」と感謝し、「後輩に色んなものを残さないといけない」と力を込める。

 “戦国東都”の頂点に立つのは容易ではない。真っ赤なTシャツを着た熱き新主将は、強い覚悟を胸にきょうもグラウンドで声を張り上げる。(青木 貴紀)

続きを表示

2016年9月4日のニュース