江夏以来46年ぶり 藤浪セ高卒新人で10勝

[ 2013年9月1日 06:00 ]

<神・広>1回、丸の打球が藤浪のふとももを直撃

セ・リーグ 阪神2-1広島

(8月31日 甲子園)
 雨にも負けず、イタチにも動揺せず。阪神の藤浪晋太郎投手(19)は31日の広島戦で6回を6安打1失点。甲子園史上最長となる計1時間27分の中断にも集中力を切らさず、セ・リーグの高卒新人では67年の阪神・江夏豊以来、46年ぶりの2桁勝利を達成した。大阪桐蔭時代から不敗神話が続く甲子園ではこれで14連勝。チームの連敗も4で止めた19歳が、底知れぬ能力をあらためて証明した。

 いくつもの悪条件が重なった。しかし、マウンドの19歳は全く動じない。時には笑みさえ浮かべた。7月14日のDeNA戦以来の甲子園。やっぱり藤浪は負けなかった。

 「10勝と言ってもまだ通過点にすぎない。残りのシーズンもしっかり頑張りたい」。お立ち台では思い切り声を張り上げた。高卒新人としては07年の楽天・田中以来の2桁勝利で、セ・リーグでは偉大なOB・江夏以来の快挙となった。

 この日は本来の振りかぶる投球ではなく、セットポジションで臨んだ。2回は飛球の送りバントをあえてワンバウンドしてから捕球し、併殺打と頭脳的な好守で1失点に切り抜けた。

逆境でこそ力を発揮する。試合開始から断続的に降った雨は3回表に雨脚を強め、プロ初体験の19分間の中断。5回表には、アルプス席付近からイタチが現れ、左翼の芝の上を走り、三遊間を通って、三塁側ベンチ辺りに消えた。集中力をそがれそうな場面にも「ちょっと可愛かったので、思わず苦笑いしてしまいました。可愛かったので許してあげましょう」と笑みをこぼした。初回には丸の打球が左内腿に当たるアクシデントもあった。

 「絶体絶命」にも無類の強さを誇る。5回には1死満塁の窮地に陥ったが、「ターニングポイント」と勝負どころでギアを入れ替えた。150キロ超の直球を連発し、丸を見逃し三振、キラを三塁ファウルフライに仕留めた。満塁は今季6度目で、いまだ被安打0だ。

 6回を投げ終えた後に再び雨が強まり、1時間8分の中断。首脳陣の配慮で降板となったが「雨が降ったので仕方がないですが、終盤くらいまではしっかりゲームをつくりたかった」と先発投手としての自覚を見せた。

 頼もしい先輩との「勝負」にも勝った。実はシーズン開幕前、大阪桐蔭の先輩である西岡と、ある約束を交わしていた。その内容とは、今季10勝すれば、西岡が高級オーダーメードスーツをプレゼントする。しかし、できない場合は上下黄色のスーツを作り、藤浪はそれを来年のキャンプインの際に着用するというものだった。後輩の活躍を心から願う西岡流の粋な計らい。その期待にも応えた。

 6年前の楽天・田中と同じ、8月31日に10勝目をマーク。そして同じく田中以来となる高卒新人の「100イニング100奪三振」にも到達した。どこまで大きくなるのか。「藤浪伝説」は、まだ序章にすぎない。

 ▼甲子園の過去の動物乱入 07年3月24日に行われたセンバツ1回戦、都留―今治西戦の5回、都留の攻撃中に三塁側ベンチ付近からイタチがグラウンドに侵入。ダイヤモンドを横切ると一塁側フェンスの下を通って姿を消した。03年8月27日の阪神―巨人戦の5回、阪神の攻撃中に一塁側ベンチから猫が飛び出し、三塁側ベンチ上に乗るなど約30秒間走り回った。最後は捕まえようとした田淵チーフ打撃コーチをかわして、一塁側ベンチ裏に戻っていった。07~10年に行われた「平成の大改修」以前は1メートルを超えるアオダイショウもすんでいた。

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