イチ流ゴルフスイング “読み”生かし落ちる球に対応

[ 2012年4月29日 06:00 ]

試合前、ゴルフスイングのようなフォームで素振りする日本ハム・稲葉

パ・リーグ 日本ハム3-3楽天

(4月28日 Kスタ宮城)
 日本ハム・稲葉の安打量産の背景には、自在に操る2種類のスイングがある。通常の選手は、地面に対して水平な「レベルスイング(横振り)」を強く意識する。豊富な練習量でスイングスピードも速い稲葉だが、ヤクルト時代まではフォークなど縦の変化球にもろい一面も持ち合わせていた。

 縦の変化球に横振りで対応すると、球を点で捉えるためゴロかファウルが多くなる。05年の日本ハム移籍後、当時の白井ヘッドコーチ(現DeNA内野守備走塁コーチ)が推奨していた「縦振り」に出合って開眼した。「それまでは変化球に対応する柔らかさがなかった。ヘッドを立てたままのイメージで振る“縦振り”にしてから落ちる球が拾えるようになった。これに気づいたことは本当に大きなことだった」と稲葉も振り返る。

 低めの球を打ちにいくと腕の軌道はゴルフスイングになるが、その際にバットのヘッドは落とさない。左脇を締めたまま左打者であれば右手の甲を球にぶつけていく感覚で打つ。日本ハム・田中打撃コーチは「右手甲が上を向くレベルスイングでは球に力も伝わらない。縦振りを会得できれば変化球でも強く叩ける。ただ相当振り込んで体に覚え込ませないと自然にそういうふうに出てこない」と話す。

 瞬時に縦、横を使い分ける高等技術を助けているのが「読み」だ。ヤクルト入団時に当時の野村監督に叩き込まれたID野球。「配球の読み、勘、そして経験。これが間違いなく生きていますね」。稲葉はある程度の球種、コースを予測して打席に立つことで2種類のスイングのスムーズな使い分けを可能にしている。

 打席に入る直前のルーティンはマリナーズ・イチローに似ている。構えたバットをぐいっと後ろに引きトップの位置を確認しながらストレッチ。バットを上から下、そしてそのまま右手一本で大きく振り切る。稲葉は「スイングに柔らかさを出すための確認作業みたいなもの」と明かす。「そういえば、イチロー君もやりますね」。海を隔てた安打製造機が同じルーティンをしているのは実に興味深い。

 ▼DeNA・白井内野守備走塁コーチ 低めの変化球が全盛の時代。対応できるように若手に教えていたら、稲葉から興味を示してくれた。当時は新庄もトライして結果を残したこともあるでしょう。もともと高めを打つのは得意だったし、打撃の幅が広がりましたよね。年齢を重ねた後にフォームを変えるのは勇気がいるし、それまでと全く逆のことで難しいんだけど、率先して取り組んで結果を出した。

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2012年4月29日のニュース