楽天ナイン、そして東北のファンへ…山崎別れの中前打

[ 2011年10月11日 06:00 ]

<楽・ロ>レフトスタンドのファンに頭を下げて感謝を伝える山崎

パ・リーグ 楽天6―1ロッテ

(10月10日 Kスタ宮城)
 さようなら、ミスター・イーグルス――。今季限りの退団を発表した楽天・山崎武司内野手(42)が10日、ロッテ戦で最後の打席に立ち、ナインの胴上げを受けた。球団創設から7年間、思い出を共有したチームメート、ファンが涙で別れを惜しみ、そして山崎本人が男泣きした。チームリーダーとして首脳陣とぶつかり、コーチ就任要請も固辞して、現役でのプレーを選んだ。先のことは分からないが、真っすぐな男は、敵として仙台に戻ってくると宣言した。

 体重100キロの巨体が6度も宙を舞った。チームメートの手で人生初の胴上げ。山崎は少年のように両手を広げて「ありがとう」「やったー」と叫んだ。サプライズは続く。選手会長の嶋から花束と全選手、スタッフからのメッセージ入りユニホームがプレゼント。「胴上げされることは夢だった。寄せ書きもうれしくて。こいつらが頼もしく見えた。こんなに感激したのは生まれて初めて」。成長した後輩たちの粋な計らいに、涙を抑えることができなかった。小山から受け取ったウイニングボールは「これだけは墓場に持って行く」と大事にしまった。

 仙台のファンの大歓声にも涙があふれた。前日に突然の退団表明。18、19日のロッテ戦(Kスタ宮城)を残すが、球団の最終戦セレモニーに配慮した本人の意向で、この日が最後の試合となった。大声援で迎えられた最終打席は、山崎らしい打球だった。7回1死から代打で登場。2球目の141キロ直球を強烈なライナーで中前へ運んだ。11日ぶりの打席で安打を放ち、試合後のお立ち台では「チームメート、球団のおかげで最高の思い出になった。こういう形で仙台を離れますが、この恩は一生忘れません」。言葉を詰まらせながら、最後のメッセージを伝えた。

 楽天・山崎の最後の姿を目に焼き付けようと、当日券は通常の2倍以上となる3000枚が売れた。試合後はクラブハウス前で700人の熱狂的ファンから「山崎コール」を受けた。「仙台のファンとの別れは、今でも諦めがつかないくらい寂しい」と語るが、次の夢も描いている。「違うユニホームを着て帰ってくることを夢見ている。いつまでもガキ大将・山崎武司を貫いて。田中の鼻っ柱を折ってやりたいな」。厳しく指導し、バットで助け、球界のエースに成長する姿を見守った若き右腕に挑戦状も叩きつけた。

 起用法をめぐり、首脳陣とぶつかった。後輩たちのため、自ら矢面に立った。そして、コーチ就任要請を断り、現役続行を選んだ。次にどこでプレーするか、まだ見当もつかない。そんなすべてを豪快に笑い飛ばし、東北に愛された男は、新たな一歩を踏み出した。 

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2011年10月11日のニュース