3年目ついに初安打!大田「気持ちで」延長V撃

[ 2011年5月19日 06:00 ]

<楽・巨>10回1死満塁、中前に勝ち越しの2点適時打を放ち、吠える大田

交流戦 巨人6-4楽天 

(5月18日 Kスタ宮城)
 孝行息子がやった。巨人の大田泰示内野手(20)が18日、楽天戦で同点の延長10回1死満塁から、試合を決める中前への2点適時打を放った。東海大相模出身、プロ3年目の初安打。2008年のドラフト1位でプロの世界に導いてくれたのは高校の大先輩。その原辰徳監督(52)の恩に報いる一打で、チームに4月25日以来の貯金1をもたらした。

 一塁ベース上、はじける笑顔で背番号55がガッツポーズを繰り返した。延長10回1死満塁。大田がサンチェスの外角よりのスライダーに食らいついた。バットの先に何とか当てた姿は不格好だった。それでも高く上がった飛球は勝ち越しの2点中前打。プロ3年目、8打席目の初安打初打点がいきなりの決勝打だ。

 「気持ちでああいうヒットになった。どんな形でもよかったので初ヒットをと思った。チームが勝てる状況をつくれたのが一番、うれしい」

 主将の阿部の2発などで3度、先行しながら三たび追いつかれた。9回に阿部の代走で途中出場していた大田が、延長10回の好機で今季初打席。初球、外角低めのボール球のスライダーを空振り「頭を整理して打席に入ったけど空振りしてパニックになった状況だった」。一握り短く持ったバットで2球目の同じボールを拾った。あとは興奮の中にいた。

 巨人のユニホームに袖を通す宿命だった。広島県福山市立城南中2年の時、野球教室で当時は野球評論家だった原監督に出会った。直接指導を受け東海大相模進学を決断。高校通算65本塁打を放ち「辰徳2世」と呼ばれた。08年ドラフト。ソフトバンクと競合の末、原監督が6度目で初めて引き当てたくじだった。

 入団後は背番号の重さを痛感した。「55」は松井(現アスレチックス)から7年ぶりに譲り受けた。2年間で1軍出場は5試合のみと結果が出ない。ファームでは「55番が泣いてるぞ」など、心ないやじも飛ばされた。入団時は関係者を通じて松井から「頑張れよ」という激励も受けた。昨年ジャイアンツ球場での練習中、マシン打撃のボールを拾いながら「僕のことなんてもう忘れているでしょう」とポツリと漏らした。

 ポスト原、ポスト松井の重圧と闘い、3年目。原監督は「(大田)泰示の野球人生において自分の中で記憶に残る1本になったと思う。当たりとしては本意ではなかったが、いいところに飛んだ」と、はい上がってきた大型野手を称えた。

 チームの今季初3連勝、4月25日以来の貯金1を引き寄せた記念球は手元に届いた。「初ホームラン(の記念球)は親にあげたいけど、今回は自分で持っています。アグレッシブに1つの勝ちのためにチームに貢献したい」。背番号55を自分のものにする、大田の長い旅が始まった。

 ◆大田 泰示(おおた・たいし)1990年(平2)6月9日、広島県福山市生まれの20歳。東海大相模では1年春からベンチ入りし、3年夏の北神奈川大会では、県記録となる5本塁打をマークした。高校通算65本塁打。08年ドラフト1位で巨人入りし2年目の昨季は2軍で21本塁打を放った。家族は両親と兄2人。1メートル88、91キロ。右投げ右打ち。

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2011年5月19日のニュース