炎鵬 涙の復帰 敗れても「最高ですね」 脊髄損傷で寝たきりから序ノ口で420日ぶり

[ 2024年7月16日 04:45 ]

大相撲名古屋場所2日目 ( 2024年7月15日    ドルフィンズアリーナ )

黒星発進も、支度部屋で笑顔があふれる炎鵬(撮影・井垣 忠夫)
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 元幕内で西序ノ口13枚目の炎鵬(29=伊勢ケ浜部屋)が7場所連続休場から復帰し、昨年夏場所9日目以来420日ぶりの土俵に上がった。脊髄損傷の大ケガで寝たきり状態になってから1年2カ月。復帰戦を白星で飾ることはできなかったが、場内からは温かい拍手が送られた。幕内では、横綱・照ノ富士が2連勝とし、3大関はそれぞれ初白星。上位陣安泰となった。

 普段は閑散としている朝9時半過ぎの場内が、いつになく熱気を帯びていた。絶大な人気を誇る小兵の炎鵬が、元幕内として史上最も低い地位で登場。約400人の観衆から大声援が送られた。立ち合いで、頭で当たって押し込むと、右からいなされて大きく泳ぎ、右足が土俵を割った。既に関取衆と互角に渡り合う実力を持つ日大出身の23歳、清水海(境川部屋)に敗れはしたが、取組直後は「最高ですね」とすがすがしい表情。相撲を取れることが何よりうれしかった。

 土俵に立つこと自体が奇跡だった。首を痛めていた1メートル67、100キロの体は昨年夏場所中に悲鳴を上げ、自力で立てない状態に。脊髄損傷で、相撲どころか日常生活もままならないほどの重傷だった。それでも「まだ体が動くのは神様が与えてくれたチャンス」とわずかな望みを信じた。

 昨年8月末に四股が踏めるようになり、12月には実戦稽古を再開。そこから慎重な調整を進め、満を持して復帰の時を迎えた。2週間の寝たきり生活から始めた壮絶なリハビリを思い返すと言葉を詰まらせ「感謝しかないですね」と涙。「今日という日までやってきたことを皆さんに見せられたらと思って」。復帰の土俵で、その生きざまを見せた。

 「命懸けと言ったら大げさだけど、明日が最後になるかもしれない。後悔がないようにやっていきたい」。覚悟を決めて臨む土俵だが、悲愴(ひそう)感はない。「やっぱり相撲が好き。生きがいですね」。前を向く明るい表情は、前例のない挑戦の先にある関取復帰の日を見据えている。  

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