米国のスポーツを書くために必要なこと(終)=コラムと未来編
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【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】スポーツだけでなくどんなジャンルの電子版“商業コラム”にはある程度の鉄則がある。しかも起承転結を整えようとする一般的な作文や小論文とは少し違う。思ったことをそのまま書き連ねるわけにもいかない。自分の意見を一人称のまま全部ぶちまけようとすると反発を買ってしまうこともある。
まず冒頭部分はある意味“命”かもしれない。広げた新聞紙ではなく小さなスマホで読む人がほとんどなので、出だしでつまらないと思われると画面をスクロールしてくれないので、最初はどうしてもキャッチーな言葉が必要になる。
起承転結は構成的に否定はしないが、冒頭にまずオチに等しい「結」をもってきて“先制攻撃”をかましておかないと、そこから先は読んでもらえないと覚悟したほうがいい。なので最後には「第2の結」が必要。これは本題の噺(はなし)に入る前の「まくら」で笑わせておいて、最後に「サゲ」がある落語にも似ている。
しかし全部読んでもらうには最初と最後だけでなく、各文節に間断なくアクセント的な要素を随所に散りばめていくスタイルが理想型で、漫才コンビ「笑い飯」のダブル・ボケ(ダブル・ツッコミ?)のようなアップテンポな展開が長年にわたってコラムを書くときの私の理想だった。(一度も成功したことはなかったが…)。「ちょっとご相談がありまして」と悠長に切り出していると、すぐに「ちょっと何言っているか分からない」と読み手に見放される世界である。
何を言いたいのかはコラムの見出しになる部分。だからといって、どんなに知識と経験と論理展開に自信があっても、一人で「自分の考えはこうだ」と突っ走るのはやめよう。同じ意見を持つ著名人の談話や意見、関連する数値が明確なデータ、同じ場面を物語る身近な情景にできるだけ力を借りよう。そもそも読み手との接点がない(に等しい)のだから、まずその距離を埋めていくことがコラムを書く上での努力目標でもある。
俳句はとても参考になると思っている。たった17文字で情景、時間経過、色彩、匂い、心情などを伝えられる“技術”を持っているからだ。直接的な物言いはせず、違う事象や事物にそれを託して、読み手に言わんとしていることを想像してもらう。この日本独自の文芸の手法に従っていれば、たとえ長い文章であっても言外に良質の“文字なき主張”が生まれるし、そこがコラムニストが密かに狙っている部分。だからプレバトに出演されている夏井いつき先生や特別永世名人の梅沢富美男さんは、たぶんスポーツ・コラムニストになっていても、いい文章を書いていたのではないかと思う。
「漫画のマにイロハのイ。稽古のケにルビーのル。中黒(・)を入れまして新聞のシに濁点、小さな羊羹のヨ。音引き(―)を入れまして太鼓のタに濁点と終わりのン」
私が入社した80年代前半にはファクスさえない取材現場があった。社内には速記部門があって、原稿は電話で送稿。そのとき外国の人物などを表記するカタカナには“字解き”という作業があって、たとえばマイケル・ジョーダンを原稿化したいときには、公衆電話の周囲にいる人が怪訝な表情を見せる中で受話器に向かってこんな風につぶやいていた。
しかしアナログは去り、デジタルが時代を席巻している。さらに人工知能(AI)が人間社会を包み込むようになり、いくつかの職業はやがてAIに取って代わられると言われている。
記者業もそのひとつ。取材対象が会見などで口にしたことや、試合展開と個人成績だけの単純な原稿であれば人間より早く出稿が可能なのだろう。これも時の流れだ。だからこそこれからスポーツ・ジャーナリズムに身を投じる人は、これまで以上にその人にしかできない“こだわり”が必要だ。でないと次々にAIがそつのない原稿を短時間で書いてしまう時代がきっと来る。
テレワークの私はひたすら選手や試合そのものに隠れている(と感じた)データを探した。昨季のNBAのプレーオフでは八村選手が所属するレイカーズがファイナルの一歩手前の西地区決勝まで進出したが、第7シードからそこまで勝ち上がったのは1987年のスーパーソニックス(現サンダー)以来、36年ぶり2チーム目だった。個人得点などの通算記録は今のAIでもわかる(たぶん)。しかし第7シードのチームがプレーオフでどんな成績を収めたのかは、過去の年度別プレーオフ成績をひとつずつすべてチェックしないとわからない。
つまり人間の手が加わって初めて生まれるデータのひとつ。もちろん近未来にはそれさえも迅速に処理してしまう超万能型のAI記者が登場するのだろうが、見えないライバルに抵抗しようと思えば、自分で抽出する手作りのデータがきっとものを言う。
調べたのはプレーオフが12チームから16チーム制になった1984年以降の年度別全成績。ノートに1年ごとに書き込んで87年のスーパーソニックスの存在を発見したときには正直うれしかった。もしレイカーズがファイナルまで勝ち進んでいれば第7シードとしては初の快挙だったが、それでも自分で見つけた手書きのデータはレイカーズの原稿の肉となり骨となった。
これが41年間に及んだ私の記者生活最後のコラムになる。悔いはない。広告会社に内定が出ていながら「好きなことをやらせてほしい」と母親を説き伏せて入り込んだ世界。やるだけのことはやった。あとは誰かにバトンを渡したいと思う。
心残りと言えば、このコラムの「第2の結」を探せなかったこと。笑いを取れないのはひとえに私の筆力が未熟だったからだが、やはり最後ぐらいはAIに相談するべきだったか…。
ではどこにいるのかわからないけど、次の走者にバトンを放り投げます。誰なのかはわかりませんが、どこかで受け取ってください。ここまで読んでいただいた方に心から感謝申し上げます。(終)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは5時間35分で完走。今後の目標はマスターズ陸上の100メートルで13秒台前半で走ること(無理かな~)。
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