ナゲッツにいた“持ってる男” C・ブラウンは大学とNBAで2年連続の頂点 史上5人目のラッキーボーイ

[ 2023年6月13日 13:26 ]

大学とNBAで2年連続で「頂点」に立ったナゲッツのC・ブラウン(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】世の中に散らばっている“幸運”とは決して万人に平等ではないと思う。日本では「持ってる」とも表現されるどこからか運を引き寄せてくる人間たち。NBAファイナルで初優勝を遂げたナゲッツにもそんな選手がいた。

 ナゲッツのマイケル・マローン監督(51)はファイナルをほぼ8人のローテーションで回していたが、そのうちの1人がドラフト全体21番目に指名された新人のクリスチャン・ブラウン(22=198センチ、100キロ)で、優勝を決めた第5戦では24分出場して7得点と3リバウンドをマークしていた。

 ブラウンはカンザス大の出身で、2022年のNCAAトーナメント(全米大学選手権)でノース・カロライナ大を72―69で下して優勝。大学4年生を待たずにNBA入りを果たしたが、ルーキーイヤーにチャンピオン・リングを獲得してしまった。

 ドラフトではチームメートだったオーチャイ・アバジ(23=196センチ、97キロ)が全体14番目にキャバリアーズに指名(その後ジャズにトレード)されており、ブラウンの名前がコールされたのはその7つあと。しかしアバジ所属のジャズがプレーオフ進出を逃したのに対して、ブラウンはニコラ・ヨキッチ(28)とジャマール・マーリー(26)を中心とするナゲッツでしっかりとした“歯車”となり、NBA初年度で優勝メンバーに名を連ねることになった。

 NCAAトーナメントの優勝翌年にNBAファイナルでも優勝を経験したのは過去4人のみ。1957年にビル・ラッセル(サンフランシスコ大→セルティクス)、1973年にヘンリー・ビビー(元キングスのマイク・ビビーの父、UCLA→ニックス)、1980年にマジック・ジョンソン(ミシガン州立大→レイカーズ)、1987年にビリー・トンプソン(ルイビル大→レイカーズ)が成し遂げていたが、ここ35年間、「持ってる男」は現れなかった。

 しかもブラウンはカンザス州のブルーバレー・ノースウエスト高時代には州の選手権で3回優勝。高校→大学→NBAとすべて優勝を経験している数少ない選手となった。

 可能性としてブラウンには史上2人目となる五輪を含めた3年連続のトリプルタイトル奪取という目標が残されている。ジョンソンは1992年のバルセロナ五輪で優勝して五輪の金メダルも獲得しているが、ラッセルだけは1955年と56年にNCAAトーナメント、56年にメルボルン五輪、57年にファイナルで優勝と3年間でタイトルを総なめ。現時点での実績で、ブラウンが来年のパリ五輪の米国代表に選出されるとは思えないが、3年連続で異なるビッグタイトルをすべて手にするチャンスがあるのは、「自分は本当に恵まれていると思う。いいコーチといい仲間がいるチームにたまたま自分がいただけなんだ」と語ったナゲッツの背番号「0」だけなのである。

 ナゲッツの優勝とヨキッチのMVPで幕を閉じた今年のNBAファイナル。このドラマは、あとほんの少しだけスピンオフ的な“夢の続き”を残している。

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった20238年の東京マラソンは5時間35分で完走。

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