稀勢 ヒヤリも逆転○“ケガの功名”下半身強化で驚異の粘り腰

[ 2017年5月17日 05:30 ]

大相撲夏場所3日目 ( 2017年5月16日    両国国技館 )

千代の国(左)の攻めに右足1本で耐える稀勢の里
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 横綱・稀勢の里が絶体絶命のピンチを切り抜けて白星を先行させた。平幕・千代の国に懐に入られて俵に足がかかったが、痛めている左上腕で相手の差し手を抱えて残し、引かれたところで一気に出て押し出した。新横綱の春場所から平幕相手に無傷の10連勝で、初顔相手にも10連勝となった。鶴竜は連敗を脱出し、白鵬、日馬富士は3連勝。春場所2日目以来の4横綱安泰となった。

 驚異の粘り腰だ。前日に初金星を挙げた千代の国を捕まえきれず、右差しを許すと左半身で右足が俵にかかった。だが、のけ反りそうになりながら痛めている左腕で差し手を抱えながら踏ん張った。たまらず相手が引いたところで、もたれ掛かるように出て押し出し。胸から腹にかけて土がついたが、金星は許さなかった。

 この日の懸賞は前日の41本を上回る47本。勢いに乗る26歳との一番に注目度も高かった。ヒヤリとしたかと聞かれると「うん」と答えるしかなかった。「まあ何があるか分からないので。最後までね」。諦めない気持ちが逆転勝ちにつながった。

 左上腕付近の負傷により4月の春巡業を全休した。その間は非公開でトレーニングを積み、上半身が使えない分、徹底的に下半身を強化した。1日の番付発表の会見で「下半身は100%」と自負したが、言葉通りに強じんな下半身で残してみせた。

 横綱昇進後、平幕との対戦は10度目だったが、またも退けた。負けなしで10連勝としたのは、15日制が定着した1949年夏場所以降に誕生した横綱32人で7人しかいない。この日の朝稽古後には「上位に来るくらいだから、集中してやるだけ」と話すなど慢心はなかった。初顔相手は大関時代の14年秋場所で逸ノ城に敗れたのを最後に10連勝。誰が相手でも全力を出すという信念は好結果につながっているだけでなく、ファンを魅了する要因にもなっている。

 まわしに手がかからなくても、しっかりと相手の攻めにも対応できている。「いい状態でやれている。また明日につながる」。万全でなくても言い訳はしない。土俵に上がる以上、横綱の責任を果たすために前を見続けていく。

 ▼千代の国 苦しかった。(引いたのは)自分の弱い部分。全部が強かった。重かった。(あと一押しが足りず、引いて墓穴。15秒8の熱戦に息も絶え絶え)

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2017年5月17日のニュース