17場所ぶり幕内復帰の朝赤龍 ケガでも土俵に立ち続けた訳

[ 2015年9月26日 10:30 ]

朝赤龍

 大相撲秋場所は連日の満員札止めが続いている。盛り上がりを見せる今場所の幕内には久々に見る男の姿もあった。かつて横綱・朝青龍と一緒にモンゴルから来日し、00年代前半には優勝争いにも顔を出した元関脇の朝赤龍(34=高砂部屋)だ。

 17場所ぶりの幕内復帰だった。「5、6年前のような体のキレや動きは今はないけれど、幕内で相撲を取ると、やっぱり自信も戻ってくるね」と楽しそうに話す。旭天鵬(現大島親方)が名古屋場所限りで引退し、今ではモンゴル最古参(00年1月初土俵)の力士。34歳となった今なお闘争心を失わずに土俵に立ち続けるのには理由がある。

 所属する高砂部屋は横綱・朝潮、関脇・高見山、大関・小錦ら多数の個性あふれる力士を生んできた。そして1878年の部屋創設以来137年間、関取(十両以上の力士)が途絶えたことはない。現存する相撲部屋の中で最も長い期間、関取を土俵に送り込んできたことになる。10年に朝青龍が引退してから、その歴史を一人で守ってきたのが朝赤龍だ。

 最大の危機は東十両6枚目の13年初場所だった。場所直前の稽古で右足首の軟骨を傷めた。歩けないほどの重症で、初日から休場を余儀なくされた。もし他の部屋の力士だったら、全休しただろう。だが、朝赤龍は5日目から痛み止めの注射を打って再出場を強行した。幕下転落を避けるには最低4勝がノルマのところ、何とか5勝して残留を決めた。「自分が歴史ある部屋を守っていかないといけない。あの時に一番強く思ったね」と当時を振り返る。

 幕内復帰を飾った今場所、うれしいニュースがあった。西幕下筆頭の弟弟子、朝弁慶が11日目までに5勝し、来場所の十両昇進を確実にした。1人で守ってきた伝統の“後継者”がようやく誕生したのだ。

 「後輩が出てくるのはうれしい。でも、自分は自分で頑張るだけです。幕内で相撲を取るのはワクワクしますからね」

 朝赤龍としては一つ役目を果たしたわけだが、これで気持ちが切れることはなさそうだ。モンゴルの先輩、旭天鵬は40歳まで現役を続けた。朝赤龍は「(40歳まで)自分も行けるんじゃないかなって」と冗談めかして言うが、その目は笑っていない。「部屋の歴史を守る」ために戦ってきた男は「40歳まで現役」を新たなモチベーションに土俵に上がり続けることになりそうだ。 (柳田 博)

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