高橋「スッキリ」笑顔の引退発表も…電撃復帰ある?

[ 2014年10月15日 05:30 ]

高橋は笑顔で引退会見を行う

 フィギュアスケート男子で10年バンクーバー五輪で銅メダルを獲得し、同年世界選手権を制した高橋大輔(28=関大大学院)が14日、岡山市内で現役引退を表明した。2月のソチ五輪で6位に終わった後、3月の世界選手権を欠場。今季は休養し進退について熟考していたが、18年平昌五輪に向けてモチベーションを保つことが難しくなり、9月中旬に決断した。日本男子をけん引してきたエースに涙はなく、さわやかに勝負のリンクに別れを告げた。

 引退表明に付き物の感傷的な涙はない。岡山市内で行われた地元財団の表彰式のあいさつで「現役を引退します。次の目標に進んでいきたいと決めました」と話した高橋はその後の会見でも、爽やかな表情を浮かべていた。今季を休養に充てて進退について考えていたが、夏のアイスショーを終えると一気に結論に達した。「時間がかかるかなと思ったけど。どこかにその気持ち(引退)があったのかな。気持ちとしてはこの7カ月で一番、スッキリしている」と笑みも交えて口を開いた。

 引退表明の場に在学中の関大でも、報道陣が集まりやすい都内でもなく、地元の岡山を選ぶ。周囲への感謝を忘れない、高橋らしい引き際だった。「この町に生まれなければフィギュアスケートに出合っていなかった。次のスタートの場所にしたかった」。今週末、シニアのGPシリーズが開幕。「他の選手もモチベーションを上げていく時期。前にやった方がいいかな、と」。これも、高橋らしさの表れだった。目立つことを好まない高橋は、引退セレモニーなども辞退する方針だ。

 決断理由は「大きなものはない」と言うが、高橋が唯一、具体的に触れたのがモチベーションだった。「続けても頑張れる自分がいるのか。今の僕では不可能と感じた」。10年バンクーバー五輪での銅メダルだけでなく、GPファイナル制覇も世界選手権優勝も日本男子初の快挙だった。女子にばかり注目が集まる時代に頭角を現し、男子をメジャーにするために奮闘してきた。右膝など大きな故障を乗り越えて勝負のリンクに立ち続けたが、心が限界だった。

 今後もアイスショーに出演するものの、具体的な進路は未定。「一番欲しいのは夢や目標。指導者や振付師の選択も考えずスケートをやっていきたいのか自分の気持ちを感じたい」とする一方で、「現役に未練がないわけじゃない。チャンスがなくなったわけじゃない」と電撃復帰の可能性にも触れた。「ファンの方には“あんな選手いたな”と頭の片隅に置いていただけたら」。誰も忘れない。いや、忘れられない。高橋大輔というスケーターが残した偉大な記録も、そして鮮烈な記憶も――。

 ◆高橋 大輔(たかはし・だいすけ)1986年(昭61)3月16日生まれ、岡山県倉敷市出身の28歳。8歳でフィギュアスケートを始め、05年に全日本選手権で初優勝。五輪には3大会連続で出場し、06年トリノ大会8位、10年バンクーバー大会で日本男子で初めての表彰台となる銅メダル。14年ソチ大会は右膝故障もあり6位だった。1メートル65、60キロ。

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2014年10月15日のニュース