インスリン注射問題 文科省が相撲協会から聴取へ

[ 2011年11月10日 06:00 ]

 大相撲の十両・隆の山(28=鳴戸部屋)がインスリン注射を使用したと認めたことについて、文部科学省の奥村展三副大臣は9日の会見で、九州場所初日の13日までに日本相撲協会から事情を聴き、監督官庁として指導する意向を明らかにした。相撲協会は元横綱・隆の里の鳴戸親方(本名・高谷俊英、享年59)の急死を受け、8日に一連の週刊誌報道の調査打ち切りを表明していたばかり。公益財団法人認定に向け、新たな課題に直面することになった。

 奥村副大臣は会見で、五輪などでドーピング検査を実施する世界反ドーピング機関(WADA)の禁止薬物であるインスリンを相撲協会が禁止していないことについて言及。「私もびっくりしたし、世界から見ても批判があると思う。しっかり指導していきたい」と角界の常識が世間の常識と懸け離れていることに疑問を投げかけた。

 協会は文科省からの指導もあり、初めて週刊新潮に報じられた10月27日から隆の山のインスリン使用疑惑について調査を開始。隆の山と故鳴戸親方への聴取の結果、本人が体重を増やす目的で師匠の糖尿病治療のために処方されたインスリン注射を打ったと8日の緊急理事会で報告された。協会の薬物使用禁止規定ではインスリンの使用が禁止されておらず、隆の山には口頭注意のみで処分は下さなかった。

 協会は08年のロシア出身力士による大麻使用問題を受け、アンチ・ドーピング委員会を設置。WADAの基準に沿って禁止薬物リストを作成する予定だったが、主導していた大西祥平氏(元慶大教授)が昨年3月に死去したため、それ以降は“うやむや”となっていた。

 インスリンは血糖値を下げる働きをする一方で食欲を増進させ筋肉増強の効果もある。協会は鳴戸親方が急死したために、鳴戸部屋の疑惑全ての調査打ち切りを決定したが、文科省はその対応に不信感を募らせた。今後、監督官庁の指導により、隆の山への再調査および、協会の薬物使用禁止規定の改正を余儀なくされることは避けられない。文科省および世間を納得させる意味でも相撲協会には“世界基準”の判断が求められている。

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2011年11月10日のニュース