白鵬 一人横綱の重責果たし貫禄の全勝V

[ 2010年3月29日 06:00 ]

仲間力士に祝ってもらう白鵬(後列右から猛虎浪、安壮富士、春日王、旭天鵬、旭南海、徳瀬川、黒海、安美錦)

 他を圧倒する強さで、一人横綱の重責を果たした。大相撲春場所千秋楽は28日、大阪府立体育会館で行われ、横綱・白鵬が大関・日馬富士を上手投げで下し、15戦全勝。13回目の優勝を自身5回目となる全勝で飾った。優勝13回は尊敬する双葉山を抜いて、単独7位に浮上。元横綱・朝青龍が引退した最初の場所で、新・最強横綱の貫禄を見せつけた。

【取組結果


 全身汗だくのまま、白鵬は花道を引き揚げた。支度部屋に戻ると「ヨーッシ!」と声を張り上げ、渇いたのどに水を流し込んだ。「(負けても)あと一番あるんで気楽にいきました。うれしいけど疲れたね」。その表情にいつもの笑みはない。短い言葉に重責を果たした安ど感だけがにじんだ。
 把瑠都の1敗キープを土俵下で見届け、自らの取組への重圧が増した。春場所史上最多となる50本の懸賞がかかった一番は、突っ張り合いから日馬富士に右を差され、左上手も許した。上手投げで揺さぶられる場面もあったが、最後は右のがっぷり四つから上手投げ。「十分は十分だけど、向こうは十二分だった。精いっぱい残れたから」と満足感をにじませ、1敗で食らいついた把瑠都についても「(場所中)素晴らしい相撲だったけど、(自分は)それを上回るいい内容」と貫禄十分に言い放った。
 口には出さなかったが、一人横綱の重責に何度も押しつぶされそうになった。紗代子夫人(25)も「凄いプレッシャーを感じてた。全然話をしなかった」と初日前日の異変を振り返った。13日目からは腹痛に襲われ発熱。初日以来、約2週間ぶりに家族と再会した千秋楽前日も、午後9時には床に就くほど心身ともに疲れ切っていた。そんな苦しみを乗り越えつかんだ賜杯。一人横綱となった最初の場所で優勝するのは、04年初場所の朝青龍以来3人目。全勝優勝は史上2人目の偉業となった。
 尊敬する双葉山の優勝12回を超え「昭和の横綱、輪島関に近づきたい」と優勝14回の先輩を次のターゲットに見据える。「朝青龍関がいなくなって大きな穴があるけど、今場所、大関が誕生したし、いいライバルになってくれれば」。一人横綱の重責を果たし、さらにひと回り大きくなった白鵬が、新・最強横綱時代を築いていく。

 ▼武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)白鵬は一人横綱でよくやった。全勝するのは大変なこと。プレッシャーもあっただろうけど、危ない相撲がなかった。把瑠都は今後もどんどん力をつけるだろう。稽古をしっかりすることが大事だ。
 ▼九重審判部長(元横綱・千代の富士)(白鵬は)非の打ちどころがない。一人横綱の場所で全勝優勝できたのは、これからの相撲人生にとっても大きいし、自信になるだろう。他の力士が頑張らない限り、来場所以降も(優勝の)チャンスは増える。
 ▼白鵬を指導する熊ケ谷親方(元幕内・竹葉山)一人横綱として15戦全勝で優勝したのは第一歩。思い出にも残るだろう。ただ把瑠都が出てきてライバルが増えるし、しっかり稽古しないといけない。

 ▼白鵬の父ムンフバトさん(モンゴル相撲の元横綱)一人横綱になっても、心配はしていなかった。横綱がしっかりしないと意味がない。(白鵬を追って)横綱がこれからたくさん生まれてくるでしょう。

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2010年3月29日のニュース