福島県浪江町、再建のくさ野神社社殿で13年ぶり「安波祭」 氏子総代長「あんなにたくさんの人が…」
更地が広がる福島県浪江町の請戸地区に太鼓の音や歌声が響いたのは、2月下旬の寒空の下だった。再建されたくさ野(くさはくさかんむりに召)神社の社殿で13年ぶりに行われた、豊作や豊漁、海の安全を祈る「安波祭」。震災13年を前に、氏子総代長の五十嵐光雄さん(76)は「あんなにたくさんの人が来てくれるとは」と振り返った。当日は約300人が参加。震災で散り散りとなったかつての住民らが久々の再会を果たした。
同地区で生まれ育った五十嵐さんにとって、神社は七五三から結婚式まで人生の節目を迎えた特別な場所。しかし、津波で社殿が流失。当時の宮司らも亡くなった。近所にあった五十嵐さんの自宅ものみ込まれ、今は20キロほど離れた富岡町で暮らす。
震災から約2年後、再建を望む声が上がった。避難指示は17年に解除され一部で居住も可能になった。だが災害危険区域に指定され、新たな住宅を建てられない場所に社殿を再建することに反対の声もあった。粘り強く説得を続け、今年1月末に再建。「これからも請戸の人たちが集う場所であってほしい」と願いを込めた。
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