凄惨な沖縄戦を生き抜いた「赤毛のホルーガ」
日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の梅崎晴光(63)が担当。80年前の凄惨(せいさん)な沖縄戦を生き抜き、飼い主の島民と感動の再会を果たした“無事之名馬(ぶじこれめいば)”を紹介する。
無事之名馬という。病気やケガもなく活躍し続ける馬こそが名馬だとの意味。80年前の沖縄・伊江島にも戦火をくぐり抜けた「赤毛のホルーガ」という名の無事之名馬がいた。
沖縄本島北部の本部半島から8キロ沖合に浮かぶ伊江島。周囲22キロの島の大半が馬づくりに適した平たん地とあって、古琉球時代から沖縄有数の馬産地だった。馬は島の基幹作物であるサトウキビ産業に欠かせない動力。戦前には伊江島産馬と奄美群島から移入した喜界島産馬合わせて1000頭が飼われていた。「マーパラシェ」と呼ばれる裸馬競走は島一番の催し。五月折目(グングヮチウイミー=旧歴五月の麦穂祭)には日々の労働で苦楽を共にする農耕馬を直線300メートルの馬場に集め、酒を賭けて勝負したという。
そんな島の暮らしが一変したのは1943年。伊江島に陸軍の飛行場を建設するため島内外から3000人超の軍作業員が徴用され、農耕馬は土砂や弾薬の運搬に駆り出された。「伊江島の戦中・戦後体験記録」によれば、島の住民、知念金一さん(20=当時)も10年前から農耕用に飼っていた赤毛のホルーガに馬車を引かせて勤労奉仕に加わる。だが、米軍の艦砲射撃が始まると、避難壕(ごう)に入れない馬は小屋の中で爆音を怖がって暴れるばかり。知念さんは断腸の思いでホルーガの手綱を解き、“鉄の暴風”が吹き荒れる屋外に逃がしたという。
1945年4月16日の米軍上陸から同27日の戦闘終結までの11日間で、島民3600人のうち1500人が犠牲となった伊江島の戦争。1000頭近くいた馬はわずか8頭に激減していた。生き延びた島民2100人と8頭の馬は戦後、70キロ近く離れた慶良間諸島(渡嘉敷島、慶留間島)へ強制移住。渡嘉敷島へ連行された知念さんが馬小屋に足を運ぶと、その8頭の中に見覚えのある赤毛がいた。「ホルーガ!」。抱きしめて頭をなでると、ホルーガも甘えるように顔をすり寄せてくる。「よく助かったね。よく無事だったね」。心の傷も癒やし合える戦友になった。
渡嘉敷島では飢餓と背中合わせの難民生活。米軍の食料配給が途絶えたため雑草や海藻で食いつなぐしかなかった。そんな生活を支えたのもホルーガだ。知念さんは再会できた愛馬にスキを引かせて農地を耕した。伊江島の住民は翌46年に慶良間諸島から沖縄本島北部へ再び強制移住。47年にようやく里帰りを許されたが、帰島の船にホルーガの姿はなかった。「どうなったかは分かりませんが、地元(渡嘉敷島)の人に飼われていたと思います。見届けることをしなかったので、今となっては心残りとなっています」(知念金一さんの回想談、「伊江島の戦中・戦後体験記録」)
80年前、米軍占領下の伊江島で撮影された馬の写真が沖縄県公文書館に所蔵されている。米軍は沖縄戦で軍馬を帯同していないので現地調達したのだろう。米兵を背にしたその馬は体形からも沖縄在来系(大型改良馬)か、喜界島産馬に見える。この島では乗馬鞍を用いる習慣がなかったため裸馬に騎乗。モノクロ写真で毛色は見極めづらいが、タテガミと尾が黒いので鹿毛(赤みを帯びている鹿毛は赤毛とも称した)だろう。キャプションには「生き残った馬を米兵が使用していた。その後、慶良間に運んだようである」と記されている。慶良間へ渡る前の赤毛のホルーガを捉えた写真かもしれない。
歴史は繰り返す。ウクライナ馬術連盟チャリティー財団によれば、同国でけい養されていた約10万頭の馬の大半が防空壕に入れず、ロシア軍の空爆、艦砲射撃などで死んだ。生き残った馬はウクライナ兵の心の傷を癒やすホースセラピーを担っているという。ホルーガを想起させる21世紀の無事之名馬である。
◇梅崎 晴光(うめざき・はるみつ)1962年(昭37)10月4日生まれ、東京・高円寺出身の63歳。東京レース部専門委員。22年の定年後も競馬担当として記者活動を続けている。24年に絵本「おきなわ在来馬ものがたり」、今年8月にはJRA賞馬事文化賞&沖縄タイムス出版文化賞を受賞したノンフィクション「消えた琉球競馬」の増補改訂版を著した。現在はFM沖縄の「琉球名馬列伝」(毎週木曜午後3時10分~)に出演中。
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