【追憶のマイラーズC】97年オースミタイクーン 新人・武幸四郎が大仕事 重賞でデビュー週の初勝利

[ 2024年4月17日 06:45 ]

97年のマイラーズCを制した武幸四郎とオースミタイクーン(中央)

 新人騎手の初勝利が重賞制覇。しかもデビュー週。これはもう日本競馬史に残る快挙だろう。やってのけたのは当時18歳の武幸四郎騎手(現調教師)。レース後、あらゆるメディアがこう表現した。これが武一族の凄さなのだ、と。

 直線半ばまで、この結果を予想した人は、ほとんどいなかっただろう。オースミタイクーンは武幸を背に木曜追いをかけたため、スポーツ各紙はこぞって金曜付の“アタマ”原稿に取り上げたが、ふたを開けてみれば日曜朝の出走表に印は皆無。上から下まで“素抜け”だった。

 それもそのはず。オースミタイクーンは前年宝塚記念10着以来、約8カ月の休み明け。武邦彦師のコメントはシンプルに「仕上がりはいいが相手が強い」だった。

 それがどうだ。道中で7番手を進む11番人気オースミタイクーンは抜群に折り合った。4角手前。他馬が早々と動き出す中、武幸にはワンテンポ待つ余裕があった。この“タメ”がラストの爆発力を引き出した。

 外に出して進路を確保。手前を替えるとオースミタイクーンのエンジンがうなりを上げた。フラワーパーク、シンコウキングをかわす。残り200メートルを切って何と先頭だ。ロイヤルスズカと南井克巳、ヤマニンパラダイスと熊沢重文。剛腕2人に導かれた実力馬2頭が懸命に追い上げる。18歳の新人が導いた6歳馬は首差、振り切った。

 武邦師は目頭を押さえながら殊勲の息子を出迎えた。「直線半ばで、もしかしたらと思ったが…」。武幸は報道陣に囲まれると何度も首をひねった。「気が付いたら前に馬が1頭もいなかった。これが勝つということかあ…って」。そう、これが武幸の初勝利だったのだ。

 武幸は続けた。「不思議なレースだった。その前まで、余裕がなくて全く目に入ってこなかった周囲の騎手の勝負服が、やけにくっきりと見えた。そうしたら何だかすごく落ち着けたんです」。重賞でいきなりゾーンに入っていた。非凡な才能に改めて驚く。

 筆者はその日、中山競馬場にいた。弥生賞。武豊騎乗のランニングゲイルが勝ったのだが、弥生賞の結果について、武豊にどんなことを聞いたか全く覚えていない。覚えているのは弟・武幸の快挙に対する兄のコメントだ。

 「驚くよね。こちらだって皐月賞トライアル勝ちなのに全部持って行かれちゃった。昨日の幸四郎のレースぶりもチェックしたけど、しばらく勝つことは難しいかな、と思ったんだ。それがねえ…」

 全く信じられないことが時々起こる。これは競馬の魅力の1つだ。だが、オースミタイクーンが先頭に立った時の衝撃を超えるものは…。そうはないだろう。

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