腐らず続けた22年…黒岩騎手の逆襲始まる

[ 2023年4月21日 05:00 ]

中山GJを制した黒岩騎乗のイロゴトシ(撮影・河野 光希)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】黒岩悠騎手が生まれたのは1983年10月だから、現在39歳。父に高知競馬場へ連れて行ってもらったのが人生の大きなターニングポイントになった。「そこで競馬に興味を持ち、中学の時には騎手を目指すようになりました」

 02年、栗東・吉岡八郎厩舎からデビュー。1年目こそ2勝に終わったが、2年目には17勝。ところがさらなる飛躍を目指した3年目にアクシデントに見舞われた。落馬で骨盤骨折の重傷。半年に及ぶ休養を余儀なくされたのだ。「その1年後にも落馬をして骨折すると、次に復帰した時には減量の特典がなくなっていました」

 騎乗依頼が激減し、それに伴って勝ち鞍も減った。それでも08年には7勝を挙げ、復調の兆しを見せたが、09、10年は2年続けて未勝利。「さすがにこの時は引退も考えました」と語る。

 しかし、腐る事なく調教の手伝いを続けていると、13年に出合いがあった。調教をつけていたトウケイヘイロー(清水久)が札幌記念など重賞を3連勝。さらにその2年後、同じ清水久厩舎の鹿毛馬の調教を担当すると、その馬がG1戦線で大活躍。それが、17年の引退までに有馬記念などG1を7勝もしたキタサンブラックだった。

 「レースで乗る事はなかったですけど、走る馬の背中を経験させてもらい、良い財産になりました。また、真面目にやっていればこれからも良い馬と出合える可能性があるという希望を持てたのも良かったです」

 すると昨年、ホッコーメヴィウス(セン7=清水久)とのタッグで障害重賞を3勝。そして先週15日には、イロゴトシ(牡6=牧田)を駆って中山グランドジャンプ(J・G1)を優勝。デビュー22年目、自身初となるG1制覇を、2着に3秒1の大差をつける圧勝劇で飾ってみせた。「中山も2度目だったので、強気に乗りました。まだまだ伸びしろがある馬だと思うので、これからが楽しみです!!」。地獄を見た男の、今後のさらなる活躍を期待したい。 (フリーライター)

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