【書く書くしかじか】池添兼師、思い出深いベルーガの子2頭で最後の”恩返し”

[ 2023年2月15日 10:05 ]

<第57回日経新春杯・GⅡ>口取り式で記念撮影に納まる優勝したメイショウベルーガ(牝5)と騎乗した池添謙一騎手(右から4人目)、管理する池添兼雄調教師(同6人目)ら関係者。
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 ▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の新谷尚太(45)が、調教師生活も残り2週となった池添兼雄師(70、写真)にスポットを当てた。松本好雄氏から預かったメイショウベルーガの子供2頭で今週末、最後のJRA重賞に挑む。

 28日で定年を迎える池添兼雄師は97年に調教師免許を取得、栗東・高橋直元調教師の厩舎を引き継ぐ形で99年3月に開業。“メイショウ”の冠名でおなじみの松本好雄氏の所有馬を受け継いだ。池添兼師は「メイショウさんの馬をたくさん管理させていただくことになりました。私の厩舎に来てから障害に転向したメイショウワカシオが02年中山大障害で2着に来てくれた時は涙が出るぐらいうれしかったです」と松本オーナーとの縁を懐かしむ。調教師生活27年目を迎え、JRA通算勝利は433。そのうち松本オーナー所有馬が最多となる78勝を挙げている。師は「寛大な方で本当に凄い方です。なかなかあのような方はいないと思います。開業当初からお世話になり、たくさん預託していただいた。言葉では言い表すことができない。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」とあふれる思いを口にした。

 開業9年目に松本オーナーから預かったフレンチデピュティ産駒メイショウベルーガ(牝)は厩舎ゆかりの血統となった。08年1月のデビュー戦(12着)から11年天皇賞・秋(右前けいじん帯不全断裂で競走中止)まで通算35戦(7勝)を全力で駆け抜けた。長男・謙一とのコンビで挑んだ10年日経新春杯は後方から鋭く追い込み重賞初制覇。同年秋に京都大賞典で2つ目のタイトルを獲得した。競走馬として本格化ムードを迎えた続くエリザベス女王杯。師は今でも「悔しかったね」と残念そうに振り返る。英国から参戦したスノーフェアリーの2着。ベルーガ自身も外から懸命に脚を伸ばしたが、内からケタ違いの末脚で4馬身先着された。「あの馬がいなければ…と思ったよ。(ベルーガで)G1を獲ることはできなかったけど、6歳までよく頑張ってくれた」とかつての愛馬をねぎらった。

 競走馬としても大活躍したベルーガだが、その子供が18日の東西重賞にスタンバイ。師にとってJRAラスト重賞の予定となっている。京都牝馬Sのメイショウミモザは謙一とコンビ再結成で重賞2勝目を目指す。「前走後の休養がいい方に出て、仕上がりはいい。レースで集中力を増すように、再度ブリンカーを着ける予定。今回のレースで繁殖に上がる予定なので、最後にもうひと花咲かせてほしいですね」と期待を寄せる。一方、ダイヤモンドSの19年弥生賞覇者メイショウテンゲンは長期休養明け3走目。「屈腱炎で長く休んでいたが、動きは良くなっている。松本オーナーの馬でG1を勝つことはできなかったが、最後に恩返しができればいいね」と力を込めた。座右の銘でもある「努力に勝る天才なし」。最後までひたむきに競馬と向き合う師のホースマン人生の集大成に注目したい。

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2023年2月15日のニュース