【菊花賞】プラダリア100点 艶めく大輪 ひと夏で急成長 一変した体つきと立ち姿

[ 2022年10月18日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

プラダリア
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 菊の大輪を咲かせるダリアの成長曲線だ。鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第83回菊花賞(23日、阪神)ではプラダリアに唯一満点をつけた。達眼が捉えたのはダービー(5着)時とは一変した体つきと立ち姿。3000メートルの長距離レースにふさわしいステイヤー体形に成長力が加わった3冠最終戦の主役だ。

 つくば市内の自宅近くにあるフラワーショップをのぞくと、店頭の主役がいつの間にか入れ替わっていました。リンドウやコスモス、キキョウなど初秋の花から秋の深まりを告げるパンジーやキンモクセイ、ダリアへ。中でもキク科の多年草、ダリアは圧倒的な存在感を示しています。春先に植えた球根が晩春に発芽し、苦手な高温多湿の夏に切り戻しして株を休ませると、秋が深まる頃に鮮やかな大輪を咲かせる。

 その成長曲線はプラダリアが描く成長カーブにぴたりと重なります。春先に初勝利を挙げ、晩春に青葉賞(優勝)からダービー(5着)に挑みましたが、当時は心身ともに発芽期。素質の芽を少しだけ見せた段階でした。ダービー時の馬体診断では80点にとどめて、こんな寸評を添えました。

 「腹下も背も長いステイヤー体形ですが、肋(あばら)がはっきり見えるほど細い。耳をハの字に開き、顎を突き出しながら尾も少し上げている。不機嫌そうな立ち姿です」

 それから5カ月。高温多湿の夏を北海道の牧場で過ごしたダリアは見違えるほどたくましくなって初秋の栗東トレセンに戻ってきました。ダービー時に細いと指摘した腹周りは肋が見えないぐらいふっくらした。トモの筋肉もボリュームアップ。特にトモの中心にある臀筋(でんきん=臀部の筋肉)は厚みを増すとともに上下に長く伸びています。そのトモのパワーを角度のいい立派な飛節が余すことなく推進力に換えている。1シーズンで草丈を5、6メートルも伸ばすダリアのようなひと夏の急成長です。ダービー時に指摘した通り、父ディープインパクト以上に背と腹下の長さが目立つステイヤー体形。そんな長距離仕様の余裕ある骨格にたくましい筋肉が加わったのです。

 心身一如といいますが、身体の成長に合わせて気性も大人になったのでしょう。ダービー時にはハの字に開いていた左右の耳を前方へそろえて集中している。突き出していた顎を引き、上げていた尾を自然に垂らしています。不機嫌そうだった立ち姿はハッピーな姿へ。まさに一変を告げています。毛ヅヤも抜群。今メンバーの中でもひときわ輝くダリアの大輪です。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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