【天皇賞・春】カレンブーケドール95点 トモ、肩、腹袋から感じる牡馬のようなたくましさ

[ 2021年4月27日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<天皇賞・春>まるで牡馬のようなたくましい馬体をしたカレンブーケドール
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 長距離界にも牝馬の時代がやってくる。鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第163回天皇賞・春」(5月2日、阪神)ではワールドプレミアなど牡馬勢と共にカレンブーケドールをトップ指名した。達眼が捉えたのは男勝りのボディーと阪神の変則コースに求められるコントロール性。68年ぶり史上2頭目の牝馬による春の盾獲りが現実味を帯びてきた。

 強い牝馬がG1戦線を席巻しています。アーモンドアイやクロノジェネシスなどの名牝が歴戦の牡馬勢を圧倒。昨年は古馬牡牝混合の芝G110競走のうち9競走を牝馬が優勝しました。唯一取りこぼした天皇賞・春(昨年はフィエールマン)のタイトルも今年はつかみ取るかもしれない。カレンブーケドールの威風堂々たる姿にそんな思いを強くしました。

 アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトの牡牝3冠馬と大接戦を演じた昨年のジャパンC(4着)時にも見劣らない体つき。ふっくらと丸みを帯びています。張りに満ちたトモと肩、立派な腹袋。アゴっぱりがいいので食欲旺盛なのでしょう。しっかり食べるから体が減らない。牝馬らしさを伝えるのはわずかに残る冬毛ぐらい。相変わらず牡馬のようなたくましさです。

 立ち姿には女傑と呼ぶにふさわしい貫禄を感じさせます。モグシ(簡易頭絡)だけを着けての撮影。引き手に遊びがあるほど落ち着き払っています。一昨年のオークス(2着)時は尾を上げてキンキンしていましたが、歳月は馬の気性も成長させる。すっかり大人びた、たたずまいです。スタッフに促されて前方の一点に集中した目、耳、鼻。自在なコントロールが利く従順な気性をうかがわせる顔立ちです。ステイヤー体形ではありませんが、阪神で代替開催される天皇賞・春ではこの気性が大きなアドバンテージになる。

 舞台となる阪神3200メートルは外回りコースを1周してから内回りに入っていく特異なレイアウト(別図参照)。京都競馬場の改修工事などにより天皇賞・春は過去にも阪神で4回開催されましたが、いずれも外回りができる以前の旧コースを約2周する単純なレイアウトでした。今年は1周目通過後に係員が急いで仮柵を移動し、外から内回りへ。G1初使用となるこのトリッキーなコースに求められるのは…。自在なコントロール性とレース運びのうまさ。カレンブーケドールに備わっている持ち味です。

 天皇賞・春を制した牝馬は1953年のレダ1頭。同世代にはタカハタ、クインナルビー、スウヰイスーなど名牝がそろい、「牝馬の時代」と言われたものです。令和の「牝馬の時代」を担う女傑に懸かる68年ぶりの快挙。その可能性を立ち姿が雄弁に語っています。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2021年4月27日のニュース