【有馬記念】牝馬強し!ラッキーライラック、有終の美へ 2歳女王が4歳秋でオトナに

[ 2020年12月23日 05:30 ]

調教から引き揚げるラッキーライラック(撮影・亀井 直樹)
Photo By スポニチ

 今年の牡牝混合・芝G1は牝馬が9戦8勝。この流れなら有馬記念も…。そう思わせる実力派の牝馬5頭がエントリー。エリザベス女王杯連覇ラッキーライラックはラストランを迎え、大阪杯に続く牡馬相手のG1制覇で有終の美を飾るか。

 スラッとした顔立ち、美しい栗毛の馬体が気品を感じさせる。ラッキーライラックがこのレースで現役生活にピリオドを打つ。

 デビュー3連勝で17年阪神JFを制して2歳女王へ。翌年チューリップ賞で4連勝として以降、勝てない時期が続いたが19年エリザベス女王杯で久しぶりに勝利の美酒。丸内助手は「素直にうれしかった」と振り返る。その裏には“今度こそ”との思いがあった。

 話は03年にさかのぼる。丸内助手は山本正司厩舎(07年に解散)に所属していた。トレセン2年目で当時の担当馬ヘヴンリーロマンスで臨むエリザベス女王杯は人馬ともに初のG1。「あれは26歳の頃。正直、出走できるだけで幸せでした」。鞍上は当時、騎手として活躍していた松永幹師だった。2勝クラスを勝ったばかりで格上挑戦。10着に敗れた。

 「あれで学んだのは調教の内容。ソフトとハードの線引きが大事なんだと思った。当時は未熟で技術がなかったけど、キャリアを重ねて、ようやく分かってきた。僕にとって、あの経験は大きい。今のラッキーライラックに生きているし、とにかく先生(松永幹師)の厩舎で(エリザベス女王杯を)勝てたことがうれしかった」

 ヘヴンリーロマンスは敗戦をバネに05年天皇賞・秋でG1初制覇と大きな花を咲かせた。今、携わっているラッキーライラックは今年、大阪杯V。牡馬撃破の共通点がある。牡馬相手では昨年の香港ヴァーズ(2着)を含め【1311】。道悪だった今年の宝塚記念(6着)以外は崩れていない。なぜ牝馬が強いのか?この点に関しては「(牝馬と言っても)1頭1頭違う」と前置きした上で「重量差があるから」と2キロ分のアドバンテージが効くとみている。

 前走エリザベス女王杯では史上4頭目の連覇を達成した。デビューから積み重ねたG1タイトルは4つ。誰もが認める名牝の域にたどり着いた。

 「デビュー当初から周りは優等生と言ってくれたが、実は真逆。他の馬と同じで子供だった。オトナになったのは4歳秋になってから。続けてきた稽古が実を結び、人間と意思疎通できるようになった。走りや気性、それに馬房での過ごし方が昔とは全然違う。今は本当に充実している」

 最高の舞台で最後のゲートイン。「とにかく無事、帰ってこい!今、声をかけるなら、そう伝えます」。固い絆で結ばれた人馬の物語が暮れのグランプリで完結する。

 【07年ダイワスカーレット2着から潮目が変わった】潮目が変わったのは07年ダイワスカーレットの登場だろう。3歳牝馬の果敢な挑戦で4角先頭と見せ場をつくって2着。翌年は堂々と逃げ切りで有馬の牝馬Vは史上4頭目、37年ぶりの快挙。1番人気での優勝は初めてだった。続く09年はブエナビスタがバトンをつないだ。その年の2冠馬が半馬身差2着と奮闘。翌年も2着ながら単勝1・7倍。牝馬が完全に“市民権”を得た。14年はジェンティルドンナが勝ち、昨年はリスグラシューが強い牡馬を相手に圧倒的5馬身差V。引退の花道を飾った。

続きを表示

2020年12月23日のニュース