アーモンドは凱旋門賞勝てるのか?識者7人の答えは“オフコース”

[ 2019年1月22日 05:30 ]

昨年のジャパンCを優勝したアーモンドアイ
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 競馬が織りなす物語をもっと楽しみたい――。新連載「2019〜平成最後の早春〜 競馬界アナザーストーリー」を今春G1シリーズが本格開幕する3月下旬まで随時掲載。気になる馬、人、事象に迫っていく。第1回は「アーモンドアイは凱旋門賞(10月6日、パリロンシャン)を勝てるのか?」。国内最強馬が大一番に挑む、今年の日本競馬界最大のトピック。識者7人の声を集めたその結果は…!?

 驚きの結果だ。海外競馬、凱旋門賞に非常に詳しい識者7人全員が「(条件付きで)勝てる」と答えた。これにはアーモンドアイ関係者も非常に勇気づけられるだろう。

 国枝師は凱旋門賞について、こう語る。「野平祐二先生、スピードシンボリ(69年に日本馬として初挑戦)の時代から続く日本競馬の夢。当然、私にとっても憧れの舞台。そういう舞台に挑戦できるかもしれない馬を預けてもらっていることに感謝したい」

 師はまだ調教助手だった84年。ドバイ奨学生制度(ドバイがスポンサーとなってホースマンを世界で研修させる)で夏の間、欧州で競馬の現場を見て回った。当時に思いをはせつつ、こう語った。「私の若い頃は今のように情報がなく、海外は全く未知の世界だった。今は情報があふれている時代。海外に挑戦するワクワク感やありがたみは少し薄れてしまったように思う。日本馬もどんどん強くなって、もう夢という感じでもない」。機は熟したのだ。そして、こう締めくくった。「もし出走できたら勝ちたいし、勝たなければ…という重圧も感じている」

 ルメールの話も聞こう。フランス出身。母国最大の一戦への思いは当然強い。過去10度挑戦して06年プライドでの2着が最高だ。「世界でたくさんの大レースを勝たせてもらったが、凱旋門賞は勝っていない。それを日本の馬で勝てたら…。泣いてしまうほどうれしいだろうね」。アーモンドアイへの期待はもちろんMAX。「凱旋門賞は凄く楽しみ。彼女なら世界のどこへ行っても大丈夫。類いまれなる能力を持った馬。どこからでもレースができる順応性、万能性がある。世界のどこへ行ってもジャパンCのようなレースができるよ。世界に匹敵する馬だと信じている」。識者と当事者の思いは一致した。今秋、アーモンドアイが凱旋門賞のゴールを先頭で駆け抜けるシーンが、もう見えるようだ。

 ▼米本昌史氏(シルクレーシング代表取締役社長)アーモンドアイはジャパンCで国内トップクラスを相手に凄い勝ち方をしてくれた。19年はより高みを目指してチャレンジする年。凱旋門賞はドバイの次にある高みの一つで、今はぼんやりとしか見えない。3連覇を目指すエネイブル、アーモンドアイと同じ牝馬4歳のシーオブクラスはかなり強いなという印象です。まずはドバイでどんなパフォーマンスを見せてくれるかでしょう。海外輸送や初めての経験がたくさん待ち構える。携わる人のさまざまな思い、夢がアーモンドアイに乗せられればと思いますが、目の前のチャレンジで結果を出してからですね。

 【識者の回答】

 【藤沢和雄師「YES」、必要な資質完備】久々に限りなくチャンスがあると思っています。素晴らしいスピードの持ち主。競走馬にとってスピードは一番大切なもので、人にはどうにもできない。馬自身の才能です。そして、一歩でも前に出ようとする気力、コントロールが利く従順さ。アーモンドアイは競走馬として必要な資質を全て備えています。昨年のシンザン記念。私が管理するファストアプローチを外から一気に抜いていった。あの凄い脚には参りました。のちに牝馬3冠馬になり、ジャパンCも制した脚です。凱旋門賞にあの馬で行かないでどの馬で行くんだ!と国枝師に伝えてほしい。(管理馬タイキシャトルで98年仏G1ジャックルマロワ賞制覇)

 【鈴木康弘氏「YES」、早期渡航で調整】アーモンドアイがいつパリへ渡航するか。その時期が一番のポイントです。早めに同地のシャンティイ調教場に入って、力のいるフランスの芝に対応できるフォームを身につければ勝てると思います。馬は同じ土地で調教を重ねていくと、その土地に合ったロスのない走り方をするようになる。エルコンドルパサーがいい例です。逆に直前の渡航では苦しい。アーモンドアイは奇麗な跳びをするので重たい馬場ではきついでしょう。6月以前に現地入りするのが理想です。森林に囲まれたシャンティイ調教場の朝は真夏でも過ごしやすい。かつて、私も夏に同地で調教をつけたことがありますが、クーリングダウンするときには馬の汗が引いていくほど涼しい。早期の渡航で走法を現地仕様にする。先んずれば凱旋門賞を制すです。(元日本調教師会会長、NHK解説者)

 【岡部幸雄氏「YES」、負担重量慣れて】条件さえ整えばチャンスはあると思います。早く現地に行って、環境に慣れること。そして、何より必要なのは負担重量にも慣れることです。4歳以上の牝馬が背負う58キロ(4歳以上の牡馬は59・5キロ)は日本の競馬ではまず経験できない重量。日本調教馬にとって一番のネックになっています。過去に重量を克服できたのはオルフェーヴルなど何頭もいないでしょう。この重さに慣れるには稽古だけではどうにもなりません。実戦で経験するしかない。そのためにも早く現地に渡って、前哨戦で重たい負担重量を背負うことです。(JRAアドバイザー、タイキシャトルで仏G1制覇)

 【合田直弘氏「YES」、JC再現できる】ブックメーカーのオッズでは現状、昨年の凱旋門賞1、2着馬に続く3番人気に推されている。力勝負になった時のエネイブル、切れ味勝負になった時のシーオブクラスは確かに容易ならざる敵だし、トゥーダーンホットを筆頭とした今年の3歳世代もタレントぞろいだが、アウェーの香港で生涯最高の競馬をした父ロードカナロアと、力のいる馬場を得意とする子を多く出している祖父キングカメハメハの血を引くアーモンドアイならジャパンCのパフォーマンスをパリロンシャンで再現できるはずで、そうであるならば欧州の精鋭を凌駕(りょうが)できるとみる。(競馬評論家)

 【小林 智師「YES」、高い操縦性武器】勝てると思います。3冠の勝ち方も目を見張るものがありましたが、それはあくまでも3歳牝馬同士での話。しかしジャパンCでは古馬、しかも牡馬勢を相手にとんでもないレコードで圧勝。彼女の持っている能力は疑いようのないものになったと言って良いでしょう。そう確信できるくらい、あのジャパンCの勝ちっぷり、内容は共に強烈なものでした。欧州のレースでは操縦性の高さから来る先行力は大きな武器になりますし、日本のトップレベルの馬の参戦は大きな期待を抱かせて当然です。(仏で厩舎経営)

 【平松さとし氏「YES」、前哨戦がカギ】条件付きでイエス。凱旋門賞を休養明けで勝ったのは1965年に2カ月29日ぶりで走ったシーバードが最後。以降、使っていないと勝てないのは常識。休み明けはディープインパクトですら負けたし、日本馬で連対を果たした、延べ4頭はいずれもフォワ賞を叩いていた。牝馬の場合、フォワ賞と同日、同舞台のヴェルメイユ賞がベストだが問題となるのは彼女の体質。レース後、歩様が乱れるほど激走してしまう彼女にとって本番へ中2週となるヴェルメイユ賞は良くないだろう。ヨークシャーオークス(8月22日、英ヨーク)など無事に前哨戦を使えた場合に限り勝つ可能性が出てくるとみた。(フリーライター。凱旋門賞を毎年取材)

 【田中博康師「YES」、勝つ確率は高い】アーモンドアイは凱旋門賞を勝てる馬。乗ったことも扱ったこともないが、競馬っぷりと稽古で走っている姿から本当にバランスがいい。ああいう馬が“勝てる馬”なんだと。アーモンドアイのような馬をつくりたいと厩舎スタッフには常々言っている。走りの軽さ、前後のバランスから欧州でもやれる。一部でダート馬の方がいいという声も聞くが、そんなことはない。バランス良く軽い馬の方が合う。パリロンシャンは雨が降ると特殊な馬場になるが、客観的に見ても凱旋門賞を勝つ確率は高い。世界でも通用する。(騎手時代、仏で武者修行)

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