【天皇賞・秋】レイデオロ100点!赤富士の風格帯びる立ち姿

[ 2018年10月23日 05:30 ]

赤富士のような雄壮なたたずまいのレイデオロ(撮影・村上大輔)
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 日本最高峰に到達だ。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第158回天皇賞・秋(28日、東京)ではレイデオロ(牡4=藤沢和)に唯一の満点を付けた。達眼が捉えたのは赤く染まった富士山のたたずまい。有力馬の立ち姿を名山に例えた馬体解説をお届けする。

 朝日に照らされて赤茶色に染まった富士の山肌を赤富士と呼びます。霊峰が紅の輝きを放つ神秘的な美しさ。江戸後期の浮世絵師、葛飾北斎の代表作「富嶽三十六景」でも赤富士が最初の画題になっています。

 競走馬を山に例えるなら、レイデオロは赤富士。峰のように突出したキ甲(首と背中の間の膨らみ)を包む赤茶色の鹿毛が息をのむほど美しく輝いています。よほど体調がいいのでしょう。内面にみなぎるエネルギーが薄い皮膚の外まであふれ出してきたような光沢。しばらく見ないうちにキ甲も一段と抜けてきました。富士八峰になぞらえて、昨春のダービー時は最も低い駒ケ岳、昨秋のジャパンC時は5番目の朝日岳と書いたことがありますが、今は2番目に高い白山岳あたりまで到達したか。馬の背と名付けられた急斜面の頂上にそびえる日本最高峰の剣ケ峰にも届く勢いです。トモ(後肢)の張りも凄い。富士山頂の火口跡にある雷岩のような分厚い筋肉をつけています。馬はキ甲で目方を背負い、トモで加速する。馬体の要となるこの2つの重要部位が傑出しているため、480キロ前後の体重以上に馬体を大きく見せるのです。

 キ甲の前後には富士山のなだらかな稜線(りょうせん)のようなラインが描かれています。奇麗に抜けた首差しから肩、膝、球節、つなぎ、蹄に至るまで全ての部位が絶妙な角度でリンクしています。各部位のつながりにゆとりがあるため距離に融通も利く。立ち姿には貫禄が出てきました。精かんな顔つきで真正面を見据え、タフな四肢が力みひとつなく大地をつかんでいる。富士山のたたずまいを思い起こさせる風格と安定感です。

 1週前追い切りを途中で中止したと報じられています。ぬかるんだ馬場に右前肢を取られて歩様が乱れたそうです。でも、そんなアクシデントの跡は脚元に何もない。腫れもむくみも皆無。腱はしっかり浮いていて健康そのもの。懸念には及ばないでしょう。

 赤富士の輝きを放つ鹿毛の背の先にそびえる剣ケ峰。日本一の名馬の誉れを体現した姿です。(NHK解説者)

 ▼日本の名山 富士八峰は富士山頂にある8つの峰で、高い順に日本最高峰(標高3776メートル)の剣ケ峰、白山岳、成就岳、三島岳、朝日岳、伊豆ケ岳、久須志岳、駒ケ岳。日本で2番目に高い山が赤石山脈(南アルプス)に位置する3193メートルの北岳。飛騨山脈(北アルプス)の槍ケ岳は3180メートルで5番目。赤石山脈の仙丈ケ岳は3032メートルで18番目。山梨、長野県の境界にある金峰山は2599メートルで別名・甲州御岳山。イワオヌプリはアイヌ語で「硫黄の山」を意味し、北海道南西部にある1116メートルの活火山。

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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