【NHKマイルC】タワー100点!そびえ立つ比類なき巨塔

[ 2018年5月1日 05:30 ]

キ甲が発達したタワーオブロンドン
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 3歳短距離界にそびえ立つ1強ボディーだ。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第23回NHKマイルC(6日、東京)では昨年の朝日杯FS3着馬タワーオブロンドンを唯一、満点評価した。達眼が捉えたのはロンドン塔の天守閣のように変貌を遂げたキ甲。3歳春を迎えて一段と成長した馬体だ。

 ロンドン市内を流れるテムズ川の岸辺に威容を誇るロンドン塔。NHKマイルCの主役タワーオブロンドンは世界文化遺産にもなっているこの中世の城塞(じょうさい)から名付けられたそうです。しっくいの装飾が施された塔の天守閣にあたるホワイトタワーは高さ27メートル。英国王ウィリアム1世が11世紀に築いた後、歴代の王によって増改築を重ねてきました。夏目漱石は小説「倫敦塔(ロンドンとう)」で「倫敦塔の歴史は英国の歴史を煎じ詰めたものである」と語っていますが、塔もまた歴史とともに姿形を変えてきたのです。

 同じ名を持つ競走馬も月日とともに姿を変化させています。最も顕著なのは馬体の先端、塔でいえば天守閣にあたるキ甲(首と背中の間の膨らみ)。昨年の朝日杯FS時の写真と見比べると、当時よりさらに膨らんでいます。調教やパドックでは鞍を載せているので分かりませんが、4カ月半ぶりに目にした裸馬は青年の体格。キ甲の目立たなかった少年から青年の姿に成長していました。

 キ甲が抜けてくると、体形そのものが変化します。首差しの角度が滑らかに、背から腰にかけては奇麗なラインを描くようになった。腹周りは実にたくましくなりました。アバラをうっすら浮かせながら、下腹にはしっかりとボリュームがあります。トモや肩には重量感のある筋肉がつき、立派な飛節と膝が推進力に変えている。

 2歳時から510キロ超とは思えない均整の取れた体つきでした。そこにキ甲の成長まで加わった。旺盛な食欲をうかがわせる顎っ張り。よく食べるからよく育つのです。顔立ちも2歳時より精かんになりました。しっかり立てた耳と目、鼻の穴が正面の一点を見つめてます。朝日杯FS同様、ハミも着けずに簡易頭絡だけでの写真撮影。よほどスタッフに従順なのでしょう。ひとつだけ気になるのは尾の姿。朝日杯FS時よりも尾の付け根を上げています。何か気持ちが高ぶるようなことでもあったのか。ともあれ、増改築を重ねてきたロンドン塔のように背を伸ばすキ甲。しっくいの天守閣を思わせる突き抜けた1強の馬体です。(NHK解説者)

 ▼キ甲 首と背の境にある突起で、重量を背負う起点。幼いうちは目立たないが、成長するにつれて盛り上がってくるため完成度を示すバロメーターにもなっている。キ甲が出ると、肩、首差しの角度も滑らかになり、ストライドの大きい走りができる。体高(身長)は地面からキ甲までの長さを計測。

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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